問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-113 帰還
モイスの背中から伸びる羽が二度三度羽ばたき、ズン!という音と共に地面に脚をつける。
その重量を感じさせる大きな質量の身体から発せられた着地音だったが、背に乗っていたサヤたちはそんな衝撃はまるで感じさせない着地だった。
まずイナが飛び降り、その手にはロープが握られている。
そのロープの端は、デイムの身体に巻き付けられており、ルーシーはそのロープを手にしながらモイスの身体から降りた。
続いてサヤとハルナも降り、最後にデイムが飛び降りた。
「よく来てくれた、ルーシー」
「す、ステイビル王子……い、いえ。ステイビル様!?」
「どちらでも構わない……というよりも、敬称などは不要だ……いや、不要です……かな?」
ステイビルは自分の地位が剥奪され、一般国民と同じ状況である。
対してルーシーは、競い合っていた王選の勝者側のメンバーで、今では王宮精霊使い長という役職に就いている人物。
どちらが、地位的に上かと考えた場合、その態度はおのずと決まってくる。
そのキャスメルの対応に困ってしまったのは、ルーシーの方だった。
ルーシーは久々に面会したキャスメルの心情が、よく理解できていた。
しかし本来の立場などを考慮すれば、気軽に話しかけれるような人物でないことから、ルーシーは以前と同じような態度で接する方が得策だと判断した。
――ドン!
「――ウッ!?」
背中に走る衝撃は、突き飛ばされたサヤによって行われたものだった。
「ちょっと……変な挨拶はいいんだよ。邪魔なんだからさっさと奥に行きなよ」
「あ……はい!?すみません……」
「ちょっと、サヤちゃん!そんな言い方ないでしょ!?……ごめんなさい、ルーシーさん。さ、行きましょ、こちらです」
ハルナの言葉によって、ルーシーは自分の存在がこの場にいてもいいことを許された気がしてホッとする。
建物の中に入ると、ルーシーはステイビルが正面に座る席へと案内された。
ルーシーは、ドワーフやエルフたちに様々な支持を出している姿をじっと見つめていた。
その視線に気付いたステイビルは、少し微笑みながらルーシーの視線に応えた。
「いや、私としても嬉しい。ルーシーが我々の仲間になってくれるとは……」
「な……かま……いえ、私は……」
「アンタねぇ!まだ、そんなこと言ってんの!?」
ステイビルの言葉に反応を見せたルーシーの言葉に、サヤが不快な態度を見せる。
その理由はステイビルにはさっぱりわからず、素直に当事者に聞いてみた。
「ルーシー、何かあったのか?仲間じゃないって……まさか、強引に連行されたのか?」
決してそんなはずはなく、元々二人が城に侵入したのは探し物の存在の確認のためだったと記憶している。
それに、ルーシーがこの二人に抵抗したとはいえ、それが敵う実力……実力の問題ではなく、この世界ではこの二人に敵う者などいないとエルフからは説明を受けていた。
だとすれば一体どういう理由でルーシーがこの場にいるのか……ステイビルはその答えをルーシーに追及しようとしたところで、ハルナが代わりに応えた。
「あの、ルーシーさんは私たちに協力をしてくれたんです」
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