問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-105 虫
――キン!
ハルナの背後で、何かが弾かれる音がした。
弾いたものが、サヤの足元に転がってきた。
それを手にすると、サヤは屋上の扉の奥に隠れている存在に向かって声をかける。
「やっぱり……アンタだったのか――”ソイ”」
声を掛けられた影は、ゆっくりと建物の影からその姿を見せた。
その行動は、サヤの答えが正しいと証明していた。
「ほぅ……良くわかりましたね」
「アンタなんだろ?あの馬車が襲われた時、あのボスを始末したのは……さ」
「どうして……そう思うのですか?私はただの……」
「アンタ”ただの男”が、こんなところに入れるはずがないじゃない?それに、ステイビルがこの弾を飛ばさせたときに、アンタわざと飛ばないようにさせてただろ?」
「……」
「何で?って顔しているけどさ、そんなの誰だって気付くってもんだよ……まぁ、一人を除いてさ」
「え?……なに!?」
顔や身体を向けてはいないが、ハルナはサヤの意識が自分に向いていることを感じ取り反応した。
だが、サヤは今それどころではない。
ソイの背後関係や、これからの対処法を考えながらこの場をどう乗り切るのかに思考を費やしていた。
「ククク……やはり、気付かれておりましたか。あなたがお気づきになられているということは、あの”ステイビル”も気付いていたのでしょうね?」
ハルナはソイの言葉に不快感を抱く……ステイビルを助けるために活動をしていたその名を呼び捨てにし、しかも嘲笑うような口調で口にする。
「アンタ……キャスメル側のスパイだったんだ」
「ふ、なぜそんなことを……と言いたいところですが、勘のいいあなたならその結論にたどり着けて当たり前でしょうがね……あ、これ褒め言葉ですから、念のため」
「はぁ……まぁ別にあんたみたいなのが、ウチらを煽ろうが虫がブンブンと飛んでる程度なんだけどね」
「虫……ですか?あなた方にとってはそうなのかもしれませんね。なにやら不思議な力をお持ちの様子……」
ソイもハルナとサヤが、普通の女性ではないことに気付いていた。
だが、そこから先の力についてはまだはっきりと掴めていないとサヤはソイの言葉から判断する。
「まぁ、普通じゃないのは確かだけどさ。傷付くんだよね……そんな化け物みたいな言い方されるとさ」
その言葉にハルナも”ウンウン”と頷き、同じことを感じていたのか同意の意思をみせた。
「……まぁいいでしょう。私もあなた方のことを調べていましたが、手を出してはいけないとは言われていませんでしたからね。ここで、試させてもらいましょう!!」
ソイは、袖の中に隠していた皮のベルトを両手に取り出し、それをグルグルと回転させる。
きっとその先には、あの弾が装着されているのだろう。
それが、どのタイミングで飛び出してくるかは全く予想がつかない。
だが、サヤたちはその様子を見ても特段構えることも怯える様子も見せなかった。
「その綺麗な顔が絶望に変わるところを……早く見たいものですな!!ッシ!!」
そう言ってソイは、ハルナたちに向けて攻撃を開始した。
コメント