問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-102 鍵










『助けていただき、ありがとうございました……ハルナ様』


「私のこと……知ってるんですか?」



ハルナたちの前に姿を見せたラファエルは、床に片膝を付けてハルナに深々と頭を下げて感謝の気持ちを捧げた。
その行動は前の世界にも見せたことのない感情が含まれていることを感じ、ハルナは少しだけ違和感を覚える。

だが、ハルナはこの世界で初めて出会ったラファエルから名を呼ばれて少し嬉しく思う。
この世界でも、ハルナのことを知っている存在がいることに期待を寄せる。




『えぇ、ハルナ様のことは……』



「それよりアンタ、なんで盾の中から出てきたのさ?盾とアンタは何か関係あるの?」




サヤが、ハルナの知りたかったことを遮ってラファエルに声をかける。
だが、ハルナも個人的な興味よりも、なぜラファエルが盾から出てきたのかという疑問を解決することの方が、この状況に関わる大きな問題だとして自分の聞きたい欲をグッと堪えた。




『あなた様がサヤ……様ですね?この度はお助けいただき、ありがとうございます』


「まだ、助かってないんだけどね……要はここから出られないって話なんだ。それよりも、なんでアンタは盾から出てきたのさ?」




『はい、私はキャスメルに捕らえられておりました。詳しくはこの場を出てからご説明させていただきます』



「フーン。ってことは、ここから出られる手段を……”持ってる”ってこと?」



『サヤ様……これを』



差し出したラファエルの掌の上には何もなかったが、うっすらと小さな尖ったモノが浮かび上がる。



「これ……は?」



問いかけるサヤの言葉をラファエルは聞き流し、掌を差し出したまま持ち出したものを受けて取るように無言で促す。
その行為に少しムッとしたサヤだが、受け取らないことには先に進まないと判断し、ラファエルの掌に現れたものを人差し指と親指で摘み上げた。



その物体は、ガラスのように透明な素材で円錐上の形状をしていた。
だが、それがどのように使うのかは何の意味があるのかは判るはずもない。


「ちょっと……これが一体何だっていうの?コレを使えば出られるの?そしたらどういう風に使えばいいのさ!?」


サヤは、これまでのラファエルの対応の不満が爆発し、畳みかけるように問い詰める。
ラファエルはそんなサヤの態度も、何事も無いように対応する。



『申し訳ございません……わたくしも、コレを預けられていただけなのです。その者が誰かは今お伝えすることは出来前んが、これをお渡しすれば……サヤ様ならお分かりになるはずだと』


「アタシ……なら?なんだか胡散臭い話だねぇ、これを託した正体も明かせず使い方も自分で勝手に調べろとか……あ」


サヤは自分の発言の途中で、何かに気付いた。
その言葉の中にヒントを見つけ、サヤはその能力を発揮する。



「……」



ハルナもラファエルも、サヤが何をしているのかわからなかったが、この場は邪魔をせずに黙って見守ることが正解だと判っていた。



「……ふーん。なるほどねぇ」


「サヤちゃん?何かわかった?」


「あぁ。まずはこれで出られるよ……だけどその前に」









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