問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-85 ルーシー・セイラム6










「あなた方は……なぜ、城内にこのような形で侵入されているのですか?あなた方の力であれば、こんなことをせずとも……」


「へー……じゃあ、アンタは、アンタたちを消しながら入ってきてもいいっていうんだ」


「……それは困りますが、なぜこんなに手の込んだことをされるのかが不思議なのです」


「アンタってさ、案外頭固いんだね……真面目なのかもしんないけどさ?」







サヤの挑発する態度に、ルーシーは平然とした態度で臨む。
そこに怒りの感情はないが、この場で自分自身の活殺の判断はこの女性が握っている。

せめて、この情報をだけでもという強い意思をもって、ルーシーはサヤに問い質す。







回答を待つルーシーに見つめられているサヤは、ハルナの方に一旦視線を移した。
ハルナはその視線に対し、一つだけ頷いて応えた。




「……ったく」




サヤは頭の後ろを面倒そうに手で掻きながら、舌打ちを一つ鳴らした。



「アタシたち、ちょっと探し物があってね……この中に入ってきたんだけどさ」


「探し物……ですか?なにか王国に奪われたものがあると?」


「違う違う、そうじゃなくってさ……」



そう言ってサヤとハルナは、王国が持つと背れている盾の存在を確かめるためにこの中に来たと説明した。
とりあえずルーシーはホッとした、その目的が自分たちの命を奪うことではないということに。




「ルーシーさんはそのことについて……何かご存じないですか?」



ルーシーは大精霊と同じ力をもつハルナから、依頼されるような言葉遣いに戸惑ってしまう。
普通ならば、こういう場面ではサヤのように見下したような対応の方が、ルーシーにとっては応じやすかった。



「”盾”……ですか?申し訳ございませんが、とくに思い当たるところがありません……一体それは何のために、お探しになられているのですか?」


「あぁ、そうね。ちょっとその存在について聞いたことがあってね。なんていうの、世界の謎を解き明かすっていうか……その存在を確かめたいのよねぇ。ね、ハルナ?」


「……え?あ、うん!?そうそう!そうなんです!!」


「そうなのですか……それはご足労頂いたのに、申し訳ございませんでした」


ルーシーがこう告げた後ハルナたちとルーシーの間に、十秒にも満たない無音の時間が流れた。



「それじゃ……そろそろ行こうか?」


「そうね……いつまでもここにお世話になっても……」


「……もう少し……いて頂いても……構いませんよ?」





その言葉と同時に、ルーシーの背後には大きな火の玉が二つ浮かび上がる。
火の玉の向かう先が自分たちであることに、ハルナたちはすぐに気が付いた。
しかし、ルーシーからしてみれば、そのことに対して何も驚きを見せない二人の姿がより一層不気味に感じた。




「まぁ、そうだよね……ルーシー、アンタの行動は正しいよ」


「こんなことをして……無事に済むとは思っていません。ですが、あなた方は王国にとって危険な存在であることは間違いありません。できれば……このままおとなしくして」





――ドンドン!





それと同時に、ルーシーの部屋の扉が失礼なほどに強く打ち受けられた。













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