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山口 犬

6-73 許可証






「ここが……首都みたいなとこなんだねぇ」



「あ、サヤちゃんは初めてだっけ?王都に来るのは」


サヤとハルナの間に二人の背の低いローブを着たイナとデイムがいる。
その二人も、初めて目にするこの場所に興味があるようで深く被ったローブのフードの端から、必死に外の景色を見ようとしていた。


(……イナさん、お顔が出てますよ?)


(あ!?ごめんなさい……)


ハルナから指摘を受けたイナは、そう言ってフードの上端をつまみ下にさげて顔を隠した。



ハルナたちは、ソイの手引きによって王都の中に容易に入ることができた。
そのことに対しサヤは、”簡単に事が進みすぎる”と警戒したが、ソイの代わりにハルナたちを連れてきてくれた者の話によれば、王都の検査は比較的簡単なものであると言った。
その理由は、王都に入るには王国が発行する”許可証”が必要となるからだった。


許可証が発行されるには、厳しい審査と莫大な費用が必要となり、誰でも気軽にその申請ができるわけではない。
さらに申請回数にも制限があり、二回までしか申請は許されてはいない。
その二回で許可が得られなかった場合は、資産の九割は没収され、申請者は十数年にわたり禁固刑が科せられてしまう。

手順としては、申請をすると先に”手数料”と呼ばれる費用が提示され、その金額を収めてから審査が開始される。
その後、審査によって不受理となった場合でもその手数料は返金されない。
人によっては提示された手数料が払えず、二回のうちの一回を無駄にしてしまう者もいる。

そのため大抵の”まともな”申請者は人脈などを通じて王宮の中に繋がりを持ち、事前に情報を得て根回しをすることが多かった。
正しい人の繋がりもあるが、金銭などでその繋がりを見つける者も多い。

それが不正とも取られがちだが、王国側はそれに対して規制をすることはなかった。
申請には裏で”推薦人”という制度があり、王宮の中の者が推薦をすると審査だけが容易になる。


万が一、許可書を持つ者が王都内で犯罪を犯した場合、推薦人もその処罰の対象となってしまう。



そのため、申請者側も推薦する側も、慎重になって行動する必要があった。



こんかいはブロードが許可証を持っていたため、その権利を使いハルナたちは容易に王都へと入ることができた。


――二人のドワーフを貢物として



ハルナとサヤは、ソイの部下に王都に運んでもらい従業員の一人として、王宮へ二人のドワーフを運ぶ役目を任された。
今、ハルナたちはその役目を果たそうとしている途中だった。


そのためイナとデイムには腰と手首にロープが巻かれ、行動の自由を制限するように見せていた。
不自由をさせて申し訳ないと、王都に侵入するこの方法を立案したステイビルはイナたちに詫びた。
デイムは自分たちの立場に不機嫌だったが、イナがデイムをなだめてこの作戦を了承した。


「……そろそろ入口が見えるわよ」


道案内をするハルナの言葉に反応し、他の者たちは顔を上げた。
そこには一直線に伸びた大通りの突き当りにあるお城に入るための開かれた大門が見えた。














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