問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-68 お願い









「こ……これは!?」


「も、モイス様!ご無沙汰しております!?」




イナとニナはテーブルの上でくつろぐ姿に、椅子から飛び降りて両膝を付き忠義の意を示す。



『おぉ、いつしかのドワーフたちか。お主たちも元気にしておったか?』


「我らごときのこと、覚えていただき……感激でございます。モイス様」




ドイルたちにとって、この存在がかの水の大竜神であるか信じられなった。
一見自分たちよりも弱そうなか弱い女性二人のうちの一人の掌の上で紹介され、その威厳もその大きさからは全く感じられない。
確かにその姿はこの国の物語に出てくる容姿と一致するが、その姿は王家の者とそれに関わった精霊使いなどの者しかいない。
国民の中には、その存在すらも本当に実在するのか疑問視するものがいる程、普通の者たちにとっては関わりの薄い存在だった。
ドイルも、グラキース山の上空を飛ぶ姿を見るまではその存在を疑っていた程だった。

こうして実際にその存在を目の前にしても、先ほど見た大空を翔る雄大な姿とかけ離れた今の姿に様々な思いが絡み合ってい、それを飲み込めないでいた。




――カチャ




この部屋の扉が開き、待っていた最後の二人がこの場に現れた。
まず最初にステイビルが入り、続いてその後ろからナルメルが姿を見せる。


小さいながらもその姿を見たステイビルは、片膝を付き胸に手を当てて頭を下げた。




「お初にお目にかかります……モイス様。わたしは、ステイビルと申します。偉大なるお方の姿をこの目にできたことに、感謝いたします」





この時点でドイルは、ステイビルの挨拶に目の前にし、そこにいる”小さな”存在が本物の大竜神であることをようやく理解することができた。
ステイビルはモイスとあったことはないはずだが、今まで見てきた他の竜神との類似点などからこの存在が本物であると認識したのだとドイルは理解した。その後でその対応がこの場面では最適解だと気付く。
万が一、例えこの存在が偽物であったと考えた場合、あの二人が偽物を連れてくることは何か裏があるはず……しかし、そうであったとしても、きっとこの世界に住まう者たちには何もすることができないだろうと判断する。
そう……この二人が行う行動に対して、疑うこと自体が無意味なのだとようやくドイルにもわかった。



「……それで、一体何をされていたのですか?」




そのナルメルの言葉に、ドイルの頭の中は思考から目の前の世界に引き戻された。



「はい、モイスさんに私たちに協力してもらえないか”お願い”をしに行ってきたんです」




ハルナの言葉を聞き、横にいるサヤは”くくく……”と笑いをこらえる。
きっとお願いという言葉に反応したのだと、ハルナは理解した。
その気持ちを汲んでくれたのか、モイスはハルナの言葉の後に続けてくれた。




『このハルナの言う通りだ……ワシはお前たちにこの力を貸すことに決めたぞっ!そのこともあってな、さっき現王のキャスメルに宣戦布告の挨拶をしてきたところだ!!』




モイスは楽しそうに語っているが、その話を聞いたこの場にいる者たちは小さなモイスの言葉に対し目が点になっていた。











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