問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-60 怒り








うす暗い空間の中、二人の声がいつまでも響き渡る。
そのことが意味するのは、自身が放った絶対的な攻撃が何の効果も示さずにダメージを負わせることができなかったということに他ならない。

それでなくとも自分の存在に怯えておらず……それどころか自分の存在を格下のように感じているのがその言動から見て取れる。
モイスは今までと違う侵入者に対し、警戒心から様子を見ていた。
だが、自分の存在を蔑ろにする舐められた態度に、モイスの我慢は限界がくる。



――グオォォォォオォオオォォッ!!!!!



二人の言葉を遮るように、モイスは大きな咆哮をあげた。
それでも、一人は余裕の態度で耳を指で塞ぎ、もう一人は目見開いて咆哮の様子を眺めている。
もちろんそこに、恐怖の感情は感じられない。



『お前たち、私を舐めるのもいい加減にしろ!先ほどの攻撃を防いだ褒美に一度だけ話を聞いてやろう……ここに何しに来た!?』



指で耳を塞いでいたサヤは、指を抜くと自分の着ていた服でその指を拭って綺麗にする。
その後満足そうに綺麗になった指先を眺めた後、腕を組んで話しかけてきたモイスに向かった。
その後ろをハルナも、付いていく。


「……あ、もしかして怒った?ごめんね、アンタに用事があってきたんだ」


「モイスさん……ですよね?アナタが加護を与えている王国についてお聞きしたいことがあるっていうか、そのことについてご相談・・・」





『黙れ!!ワシはあのような弱小の者たちのことなど一切関係ないわ!!……それ以上、人間のことを口にすれば、お前たちの小さな身体を噛み千切ってくるれるわ!?』



その言葉にハルナとサヤは、お互いの顔を見合わせた。



「モイスさん、人間が嫌いなのですか?いったい何があったのです……きゃぁっ!?」


『――グェッ!?』





ハルナの叫びと同時に、モイスの喉の奥から苦しむ声が聞こえる。
モイスの長い首は一瞬のうちに、ハルナを噛み千切ろうと襲い掛かってきていた。

その首の途中で押さえつけるように、サヤの放った魔素の塊がモイスの首を抑えつける。
それと同時に抑え込まれた下顎から突き上げるように岩の壁が現れ、抑えつけらたことによりカウンターを喰らったような形となり、水竜は物理的なダメージを負った。




「ハルナ……あんた、むごいことするねぇ」


「さ、サヤちゃんがそんな余計なことしなかったら、こんなひどいことにはならなかったんだよ!?」


「いやいやいや、アタシはね。ハルナが危なかったから助けようとしたんだよ?お礼は言われてもいいと思うけど、文句を言われるのは……ねぇ!?」




サヤの顔はニヤニヤしたまま、本当に不快なわけではなくハルナに冗談でそう告げているのがわかる。
二人のタイミングがそろい、その結果モイスがこのようになってしまったことが面白くて今にも吹き出しそうだった。




――グオオオオオオオオオオ!!!!!


『お前たち……許さん……許さんぞオオオ!!!!』


モイスは氷の粒や水滴を力の限り吹きだして、自分のことを見下してあざけ笑う自分よりも下等な生物を威嚇した。







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