問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-39 命令









「信用……とまではいきませんが、私はあなたの言葉に従います」


「ナルメル殿!……あなたは裏切るので!?」



怒りと驚きが混ざった感情で、デイムはイナたちの後ろから叫んだ。



「裏切る?……本当にそう思っているのですか?」




ナルメルは感情を抑え気味に話しているが、デイムの言葉に怒りを感じているのはハルナにも伝わった。



「あの……サヤちゃんが言ったことは間違っていません。私たちは怪しくはないです……理由は言えませんけど」


ナルメルはハルナからの視線と言葉を無視して、自身が感じたことを告げる。


「イナ……あなた達はドワーフの中でも魔法が扱えたわね……前にも話しましたけど、どのようにして魔法が発動するか覚えていて?」


ナルメルの質問に対し、ニナが次自分たちが教えてもらったことを答えた。

魔術に長けたエルフ族の中では、エルフの長い人生を生かして様々な実験と研究が行われていた。
その知識と技術は門外不出とされていたが、ナルメルは研究熱心であったため自分たちとその効力が違う魔法の発動をさせるドワーフたちに対して実験に協力してくれる代償として、エルフが持つ知識をイナたちに流した。
結果として、ドワーフたちが使う魔法はエルフたちのものとは違っていたが魔素を介して行われているという者は同じだった。
エルフの魔法は、術式を組みそこに魔素を流し込んで発動させていた。
ドワーフ……イナたちが扱う魔法は、身体の中に魔素を取り込み自身の中で発動させていた。
これについては、まだナルメルも検証の途中であった。



「そうでしたね……私は魔法は扱えません。ですが魔素の流れが見えることはお伝えしました」



この世界のナルメルは、魔法を扱うことができなかった……その代わりにこの世界にある魔素の流れが見えるという能力が与えられていた。



「サヤ……この者、いえ……このお方がお持ちの魔素の量は尋常ではない量です」



「尋常では……ない?それはどういう……」


「この者……いえ、このお方が自身で持っている魔素の量は、普通の生き物たちが持てる量ではありません……そう。それは、神の存在に近いものです」



「「――!?」」




一同の視線が集まってくるサヤは、あえて普通通りの顔をしていた。
その余裕の態度が、さらにイナやナルメルたちに威圧感を与えている。




「なぜ人間がそれほどの量の魔素を持っているのかわかりません……ですが、この魔素を解放するだけでここにいる者たちは消し去るほどの力を持っておられるのですよ、このお方は」




そう言われて、サヤは頭の後ろで手を組んで背もたれにドカッと身体を預けた。
そして”はぁ……”っと溜息を吐いて、視線を天井に固定したまま告げた。



「フーン……そんな能力を持っている者もいるんだね?だけどアタシは魔法は使えないよ?術式なんて知らないし、それを組み立てる言語も知らないんだから……とにかく、アタシたちは目的があるんだ。だからあんた達がどうなろうと知ったことじゃない……ここにいる隣の奴は違うみたいだけど」



サヤは顎でハルナを指し、ハルナは視線が集まってきたことに動揺した。




「え!?あ、あたし??……まぁ、できるならみんな仲良くしてもらいたいなって思います。お互いにまだその余地があるなら考えてもらえませんか?」



イナたちは三人で顔を見つめ、今までのことを思い返す。
言葉は交わしていないが三人の意見は一致したようで、イナが代表してその思いを口にする。




「わかりました……それが”ご命令”であれば」








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