問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-34 秘密にしていた魔法





「フーン……アンタがとっちゃえば?政権」


「ちょっと……サヤちゃん!?言ってることわかってるの!!!」


「何言ってんの……この男がやりたいことは、本当はそういうことなんじゃないの?だって、アンタはこのまま普通の男として終わるつもりじゃないんでしょうが?だとしたら、今のままじゃあ何も変えられる力なんてないじゃない。そうしたら”周りが変わる”か、”アンタが変わる”しかないんじゃないの?それともこのままの状況で、アンタに何かできるっていうの?ならやってみればいいさ……だけど考えてごらん。アンタがやろうとしてることはきっと王国……キャスメルから受け入れられることはないと思うけど?」





サヤの言葉に、ハルナ以外の者たちの顔つきが変わっていく。
ハルナはそれに気付き、今のサヤの言葉がこの状況が変得ることのできる小さなタネであることに気付いた。


そのことにいち早く反応を見せたのは、ドワーフの次女のニナだった。




「それが……一番いいのかもしれませんね」


「に……ニナ様!?こ、この見知らぬ者の言うことを……騙されてはいけません!?」


「それでは、デイム。あなたはこの状況を……我々ドワーフの里をどうすれば豊かにさせることができると考えているのかしら?人間の殲滅?それともエルフの殲滅?もしそれができたとしても、我々は本当に幸せになれるの?」





そのようにできたとしても、ニナは今回の自分たちのように攻撃してきた誰かのことを恨んみ狙われる立場になるだけだという。
そのことはデイムにもわかっていたが、今回のケジメはまた別なのだという。


その言葉を聞いたステイビルは、何かを言いたかったが自分が原因であるためデイムの気持ちを満足させる言葉は思いつかなかった。




「とにかく……このことは私たちも話し合う必要があります。この人間の判断によるところは大きいのですが、我々もいったん持ち帰り大竜神モイス様にお伺いを立てな……」


「え!?モイスさんがいるんですか!?」




ハルナはイナの言葉を遮り、自分の感情を口にしてしまった。


だが、その反応は良くはない。
自分たちが崇める守護神である水の大竜神を”さん”付けで呼ばれたのだから。



(あ、しまった!?)



ハルナは周りの空気が変わるのを感じ、自分の迂闊な行動を反省する。
だが、それはもう取り返しのつかないことと判断し、ただこの状況がどのように流れていくのかを黙って待つ。




「ハルナさんは……モイス様のことをご存じなのか?」




ステイビルは、この国のことを話した時に神々の存在については知らないと思っていた。
いま思えば、この者たちは知ってるも知らないも何も話していないことに気付く。
であれば、この者たちが何か知っているのではないかと、ステイビルは問い質した。


そして、イナはハルナのことをじっと見つめている。
ハルナはその視線に気付き、あることを思い出した。



「……そうか、イナさんは”嘘”を見抜く魔法が使えたんですよね」




「「――なっ!?」」



その発言に、鉄格子の外に並んだドワーフたちは目を丸くさせて驚いた。






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