問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-31 拘束







「……動くな」




隠していた姿を見せた亜人はドワーフとエルフの部隊だった。




「お前たち、ここで何をしている」




その中の一人のドワーフの女性が、ステイビルに向かって尋ねている。
ドワーフの女性の姿、ハルナには見覚えがあった。
その名を呼ぼうとした際に、ドワーフの隣にいたエルフがハルナの眉間に鏃を合わせて制した。




「関係のない者以外話しをするな、いまはこの男に問うているのだ!」




ハルナはサヤの方を見ると、”やれやれ”っといった表情で返してきた。
その余裕の態度にハルナは、サヤのことを少しだけ尊敬した。





「私たちは、あなた方と話し合いをしてくてここまで来たのです。どうか……あなた方の責任者とお話しがしたい」



「話しが……したい?我々の同志を罠に貶めた男が、何を話すというのだ……”ステイビル王子”」


「それは……」




言い訳をしようとした時、ステイビルの耳に風が通り過ぎる。
この中の一人が放った矢がステイビルの耳を掠り、そこから赤い血のしずくが滴り落ちていく。
その矢は、ドワーフの女が片手を挙げて合図をしたことによって放たれたものだった。

「今は何も話さなくていい……この者たちを連行する、その話しとやらを殺されてしまった同族の前で語ってもらうとします……お前たちも抵抗せぬように」


周りの者にそう告げて、ハルナたちの腕を後ろに回させてロープで結び縛っていく。
ハルナはその時に、サヤの背中にあの包みが消えていることに気付いたが、この者たちは気付いていないようだった。
それを最後に、ハルナの視界は目隠しによって塞がれてしまう。

ドワーフの女性の声を合図に、ハルナたちはロープに引っ張られて歩き始めた。

連行される順番はステイビル、サヤ、ハルナの順だった。
その前と後ろに先ほどのエルフとドワーフが付いている。
ハルナは雑に扱われるのではないかと思っていたが、山道も自分が記憶しているグラキース山を登った時よりも歩きやすい道を選んでくれているようだった。
しかも目隠しの状態でも、先行するロープの張りがちょうどよく歩きやすく調整してくれているようだった。

しばらく歩くと肌に触れる空気と耳に聞こえる音に変化が起き、ドワーフが用意している通路のひとつに入ったのだと理解した。
その中を進んでいくと、ドワーフたちが生活をしている鉄を打つ音、機材から漏れる蒸気、怒鳴り合うなどの生活音が耳に入ってきた。


しかし、その一部の音が一瞬にして止まった、きっと自分たちの存在を認識したためだろうと推測する。
さらに進み、生活音すら聞こえなくなり、時々規律正しい足音が聞こえる。
湿った場所までたどり着き、ハルナたちは足を止める。
鉄の扉が開かれる音がして、その先に入るように誘導された。

そこでハルナたちはまず、目隠しを外された。
薄暗い中であるため、視界はすぐに慣れた。どうやらここは牢獄の中のようだった。
鉄の扉は鉄格子でできており、その扉は再び閉ざされた。
そして、痛みを生じるほど勢いよくロープが引かれると、後ろに組んでいた手は自由になった。





「ここで、おとなしくしておいてもらおう」





一人のドワーフの男が、鉄格子越しにハルナに告げる。
デイムだった。








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