問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-18 契約成立
「そのお金で……私たちを雇いませんか?」
「ちょっとあんた、何言ってんの!?せっかくステイビルがくれるって言っているのにさぁ!!」
言葉を発した隣の女性の言は一旦置いておき、ステイビルはそのことを発した女性に問いかける。
「私があなたを……雇うですか?その理由をお聞きしても?」
ハルナは頷いて、ステイビルの疑問に答える。
「はい、それには二つの理由があります……」
ハルナのことを纏めと次のような内容だった。
一つ目の理由はステイビルの身体のことが気になるということ……先ほどこれからどこかに向かおうとしている内容が聞こえたため、その付き添いが必要であると告げた。
そしてもう一つの理由は、ハルナが持っている王宮金貨のことだった。
その話を聞いたとき、ステイビルも苦しさの中のうっすらとした記憶にエストリオがこの女性たちを追いかけてきた理由を思い出した。
「なるほどな。そうすればその金貨を使うことも怪しまれずに済む……ということか」
ステイビルは、目の前の女性が自分のことを助けてくれることに対し、報酬という形で差し出そうとした謝礼を渡せばお互いが納得することになる。
それに自分たちの問題も解決できる案を思い付いたこの女性に関心を示した。
「では、契約成立だ。報酬内容などの詳細については後程また相談する……それでよろしいか?」
「はい、それまた後程決めましょう……まだ本調子ではないようですので、今はゆっくりとお休みください。後で目的地やその理由もお聞かせください。良ければ何か力になれることがあるかもしれませんし」
そう言って、ハルナはステイビルの会釈をして部屋を出ようとした。
サヤもその後に続いていこうとしたところで、ステイビルから声がかかった。
「お待ちください……今後のためにも、お二人の”お名前”をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
ハルナはサヤと目を合わせる。
そして、ハルナから自分の名前を告げた。
「私は、ハルナです。そしてこちらが……」
「アタシはサヤ……よろしくね」
「申し訳ない……ハルナ、サヤ。その行為を、ありがたく受け取らせていただく。あなた方に、精霊の加護が降り注がれるように」
その言葉を聞き、ハルナとサヤはステイビルが休んでいた部屋を出ていった。
「ハルナ……アンタ、あれだろ?」
部屋から出て、ステイビルのところから少し距離を置いたところでサヤが話しかけてきた。
「な……なによ急に!?」
ハルナは急に話しかけられたことと、つい先ほどまでの状況を頭の中で記憶をたどっていたところに話しかけられたことで驚いた声になってしまっていた。
そのことには珍しく触れず、サヤは話を続けた。
「アンタ……あの、オリーブって子の代わりを買って出たんだろ?」
「あぁ、やっぱり……わかった?そうなの、キャスメルさんはきっと、ステイビル王子を一人きりにさせたいんだろうなって思って……だから……ごめん、勝手に」
「いや、いいさ。アタシもこの世界のことをよく調べたいと思ってたから、この世界に存在する者たちから事情を探らなきゃなって思ってからね……金貨のあれも、アンタが考え付いた理由なの?」
「そうなの……何とか理由を作らなきゃって考えてたら、ステイビル王子から報酬の話が出たからうまく使わせてもらったの」
「フーン……そうなんだ」
サヤはそう言って、ハルナの前を歩き始めた。
その頭の中は、サヤが知っていたよりも超えたハルナがそこにいた気がした。
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