問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-17 報酬










「お身体の調子はいかがですか……ステイビル様」


「あぁ……悪くないな。これも、お前が連れてきてくれたあの者たちのおかげだな。”ソイ”」


「はい、その通りです。あの者たちに出会えたことに感謝を」



――コンコン




木の扉の向こうから、ノックが聞こえた。
ステイビルは名乗らないため誰かもわからないその向こうの人物にやんわりと入室の許可を出す。


カチャ




「――おっす、どう気分は?」


「もう、サヤちゃん!そんな言い方しちゃダメ!……すみません、先ほどステイビルさんの目が覚めたと聞きまして様子を伺いに来ました」


「あぁ。構いません……それよりもどうやら助けていただいたようで、なんとお礼を申し上げたらよいか」




ステイビルは、あの日から二日間程目を覚まさなかった。
そして今ようやく、意識を取り戻した。
二日間も横になっていた身体は、自分のものではないと感じるほど重い。
ベットから上半身を起こして近くにあった、”起きたらこれを鳴らしてください”と書かれた紙の上に置いてあるベルに手を伸ばしてとるのも、今のステイビルにとっては一苦労だった。


ベルの音を聞きつけて、真っ先に入ってきたのはソイという材木屋の店主を任されている男だった。
ステイビルも王選の前から何度か合ったことがある……いや、ステイビルのことを全面的に応援してくれている人物の一人だった。
王選に敗れてからも、ソイやブロードには支援を受けている……この身が王家でなくなったにも関わらずに。
しかし、現王宮から何かを言われないためにステイビルは距離を置いて無関係を装うようにしていた。



目覚めたステイビルは、ソイからステイビルがオリーブと別れて気を失ってからこれまでの経緯の説明を受けた。
それには、自分の身体が他国から来た二人の女性によって助けられたことも含まれている。




「それが、あなたたちですね?ありがとうございます……ソイ、すまないが私の荷物から”袋”を一つとってくれ」


「え?……あ、はい」



ソイはステイビルが持っていた袋に、金貨の入った大きな袋と小さな袋が入っているのを見つけた。
小さな方の袋は王家から籍を外されて、これまでの間に使ったためにその中身が減っていた。
ソイは小さな方を手に取り、ステイビルに手渡そうとした。




「……ソイ、それではない。もう一つの方だ」




そう言ってステイビルは、ソイが差し出した袋を受け取ることを拒否した。




「で、ですがステイビル様……こ、これはこれからの……」


「よいのだ……私のように一般人には、このような大金は争いに巻き込まれる元になる。この方たちにお礼として渡してたいのだ。治るはずのないこの身体をこの方の国の秘法で治していただけたのだ、これくらいのことはするべきではないのか?これによって私はまた、やり残したことを片付けることができるのだ」





そう言われたソイは、納得のいかない表情で大きな袋と取り換えてステイビルに渡した。
その袋を手にしたステイビルは、ハルナたちに差し出したがすぐにその行動を取りやめた。

ニコニコして受け取ろうとしたサヤは、引き戻されたことにより不満な顔に変わったのをハルナは見た。
それをステイビルも当然見ており、この行動について詫びた。




「……すみません。そういえば、この中は王宮金貨だったな。ソイ……ブロードに言ってこの中身を普通の金貨に変えてから差し上げてくれないか?」


「す、ステイビル様!?そんな大量の金貨を我々はご用意できません!!」


「ならば、できる限りの金貨を用意してくれないか?無理ばかり言って済まないが、この通りだ」




そう言ってステイビルは、ソイに向かって頭を下げる。
下げた頭の上から、女性の声が聞こえた。



「あの、そのことなんですけど……」



ステイビルは頭を上げ、声をかけた女性を見つめる。



「……?なんでしょうか」


「そのお金で……私たちを雇いませんか?」








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