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山口 犬

5-114 闇の世界13








『……お前は何か知っているのか?』


「……………………は?」



サヤは、何も隠すことなく素直な気持ちが言葉として口から漏れ出た。
オスロガルムの発言は、サヤにとって寝耳に水だった。
そんなサヤに対し、オスロガルムは言葉を続ける。


『これは、ワシがお主から組織をもらい変化を遂げていく過程で見たものだ……』


オスロガルムは、その時に見たその世界の終焉をサヤに話して聞かせた。
世界が崩壊していくその様子は、”崩れ落ちる”の一言だった。

割れるはずのない空が割れ、聳え立つ山が崩れ、大地は割れて生き物やそうでない物も、全てがその中に吸い込まれていったという。
そして、最終的にはありとあらゆるものが闇の世界の中に包まれて消えていった。
その時には恐怖やそれ以外の感情は一切なく、ただ止まった時の中で世界が崩壊していくだけだったという。




「へぇ……そんな記憶、私の中にはないけど……あんたが勝手に見た妄想なんじゃないの?」


『ワシにはその、”妄想”という言葉の意味はわからん。が、それは今までワシの中に持っていなかったものであり、取り込んできた生き物の中にもそういう映像を持った者はおらんかったのは間違いがない』


オスロガルムは、意識としていたころから自分が収集した情報については全て記憶しているという。
その中には、自分の考えもあるがそのようなことを見たことはないと断言した。




「そう。でもアタシに言われても、何のことだかさっぱりだわ……よ」

そう言ってサヤは、両手を上に向けて肩をすくめるよくあるポーズをとってみせた。



『そうか……もし何か思い出したのなら。その時はワシに知らせるがいい』


「どうしたの?生き物の命なんてなんとも思っていなさそうなアンタが……そんなこと心配するなんてさ?」


『そうだ……な。確かに命というものが、どれほど大切な物かは”まだ”わかってはおらん。しかし、あれは良くない現象だというのは判る』


「もしかして……アンタ、世界が消えるのが怖いの?」


『怖い……?いや違う、そうではないな』


「なら、何をそこまで心配してるのさ?」


『先ほども言ったがな……あれは良くないものなのだ』


「よくない、よくないって……そんなのじゃ、わかんないんだよっ!?」


はっきりとしないオスロガルムに対し、サヤは声を荒げ手を打ち付けながら不満の態度を表す。
だが、オスロガルムにとっては、その行動の意味さえ意味が分からないため何の感情も湧いてこない。
サヤからの質問に対してだけ、どのように返すのがよいかを考えていた。



『そうだな……いまワシが知っている限りの感情で伝えるならば、お前の態度の通りの感情なのだろうよ』


「アタシの?それって……怒ってるってこと?」


『そうだ。あの現象はこの世界の理を無視した、そういう行為だ。ワシの知る限り、この世界で生きている者たちは大きい者から小さなものまで、生きることに全てを捧げている。その行為を全て無にするような現象は受け入れらんな。ワシは消えることなどどうでもいいが、そういうものを踏み時るようなものは許せんな』


「へぇ……アンタもそういう”感情”はあるんだ……あ!」



サヤは、言葉の途中で自分の頭の中に名案が浮かび両手を打ち付けた。
その行動にもオスロガルムは顔色を変えることなく、ただ次のサヤの言葉を待った。



「なら……さ。この世界を、あんたが支配してみなよ。そうしたら、誰かが世界を崩壊させようとするのも阻止できるんじゃないの?」







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