問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
5-74 移動の途中
「ゆっくりと、落ち着いて!!焦らなくてもいいですから!!」
シュクルスは、町の人々を誘導するために声をかける。
別な場所からは、アリルビートも同じようなことを人々に発する声が聞こえる。
「……す、すごい」
シュクルスは、山の向こうから鳴り響く音の振動に対して声が震えた。
キャスメルもその音に対し、人の力では敵うはずがないと悟る。
できることならば、この脅威をモイスが拭い去ってくれることを願いながらキャスメルは町を後にした。
キャスメルたちは、移動中に何の問題なく王都までの道のりを移動した。
そして王都に近付くにつれ、大通りに人影が見かけられるようになっていった。
「……?」
馬車を操るアリルビートは、通り過ぎる人が今までと違うことに気付いた。
そして、そのことを後ろのキャスメルたちに相談し、誰かに話を聞くことに決めた。
「お急ぎのところを申し訳ない……」
列をなして歩いていく集団の一人が、アリルビートからの声に反応して立ち止まった。
その者は後ろから続く者たちに迷惑をかけないようにと、列を外れてアリルビートの声に応じてくれた。
「……あ、はい。何でございましょうか?」
その様子と見て、遅らせてはまずいとアリルビートは手短に質問をする。
「これは、どちらに行かれるのですか?王都で何か起きたのですか?」
立ち止まった者は、アリルビートの姿を見てただの旅人ではないと装備から判断しその質問に答えることにした。
「我々は、西の王国の者です。魔物に追われ、助けを求めて東側へやってきたのです。避難民を受け入れてくれるために、他の町へ振り分けられて、そちらの町へ移動するところでございます」
「わかりました……ありがとうございました。道中、お気をつけください」
応じてくれた者は、アリルビートの言葉に一つお辞儀をして再び列に加わり歩き始めた。
後ろで聞いていたキャスメルたちも魔物という言葉を聞き、昨日の状況を思い返し焦燥感が増す。
だが、ここで馬車を飛ばしてしまうと、避難している者たちが危険になるため今までの速度よりも抑えて進むしかなかった。
そして、関所の入り口まで来たところで警備兵がアリルビートを発見し駆け寄ってきた。
「――よく、ご無事で!?」
「どうした?先ほど、西の方から話は聞いたが」
「そうですか……でしたら、至急王宮へお向かいください。事情はそこでご説明があると思います」
「……わかった」
警備兵に見送られ、馬車は王都の中へと入っていく。
騒がしくも厳戒態勢の町の中を通り抜け、キャスメルたちは王宮の中に入っていった。
そのまま、王が待つ広間に向かい早足で歩いて行く。
そして、王の広間の前で本来なら許されない出来事だがこの状況では許された人物と出会った。
「ステイビル……」
「キャスメル……無事だったか」
ステイビルの言葉にキャスメルは数回首を横に振るが、今はその理由を聞いている時ではない。
二人は広間の扉に手をかけて、大きな扉を自らの手で開けた。
「「ただいま戻りました、御父上」」
「よく来てくれた……ステイビル、キャスメル。他の者たちもよく来てくれた……」
グレイネスは少し高い位置の椅子から立ち上がり、二人の子供についている仲間を見渡した。
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