問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

5-59 非常事態







『遅かったな……お前がハルナだな?』


背中から蝙蝠のような羽をつけた悪魔の姿をしたオスロガルムの視線は、幾人いる中からハルナだけに向けられていた。
ハルナからしてみれば初めて見る存在が、自分の名前を呼んでいる。
そのことに対し気味悪くなり、思わず言葉が口に出てきた。


「あ、あなたは?……どうして私の名前を!?」


ハルナからの質問のひとつに対しては、オスロガルムではなくシュナイドが答えた。


『こいつの名は”オスロガルム”……この世の総ての魔物の頂点に立つ”魔神”と呼ばれる存在よ』

「オスロガルム……その魔神とやらが、こんなところで何をしている!?」


魔神の名前を聞いたステイビルは、オスロガルムに恐れることなくその目的を確認した。
カステオを倒すことが目的であれば、この状況でほぼ達成しているはず。
どのような理由があるかはわからないが、ハルナを待っているようにも思える。
となれば、その目的は一体……様々な推測を立てながらステイビルは相手の反応を待つ。
そして足元で倒れているカステオを、この時間で何とか助け出す術も併せて見計らっている。


そのことに気付いているのか……それともそんなことを相手が考えていること自体何の問題もないのか。
オスロガルムは、一言だけステイビルに対して答えた。



『なに……探し物をな』


「ステイビル!こいつを……がぁっ!!!!」


カステオが反応を示そうとしたが、オスロガルムが手にしている杖で砕けた関節部を押さえつけられた痛みで顔がゆがむ。
今すぐにでも助け出したい気持ちになるが、迂闊にそんな行動をとれば自分たちにも被害が出てしまう。

カステオ自身はそんなに弱くはない。
剣を交えたステイビルは、そのことをよく知っている。
そんなカステオが今のような状況になっていることは、オスロガルムはそれ以上の力を持つということ他ならない。

ステイビルは後ろで何か考えている気配を感じつつも、引き続き情報を引き出すこととカステオ救出のタイミングを見計らうべく言葉を繋げた。



「探し物……だと?それは一体どんな物だ?」


その言葉に対し、オスロガルムはステイビルたちが新しい情報を持つ可能性があると判断しその質問に答える。


『そうか……お前たちも知っているかもしれんな。……この国には昔から存在する剣があると聞いている。その剣を渡してもらいたいのだよ……お前、知っているか?』


「なぜ、その剣を望む?その剣は一体……」



その言葉にオスロガルムは、怒りを覚え杖の先をこちら向けた。
それと同時にその先には魔法の術式が浮かび上がり、無詠唱で黒い雷がステイビルの足元に走る。
これは、外したわけでもなくわざとその場所を狙ったのだろう。


『貴様……お前からの質問は許しておらんぞ?これ以上勝手に話しかけるなよ?次はその命を奪う!』



その行動に対してシュナイドは、やや大きめの身体に戻りオスロガルムに対して白い炎を浴びせた。
次の瞬間エレーナはカステオの前に氷の壁を造り出しその身を守った。

杖を使ったことにより、カステオを押し付けていた杖から自由になった。
シュナイドはエレーナに隠れて、この行動について相談を持ち掛け実行するタイミングを見計らっていた。
直撃すれば、エレーナの氷でさえ蒸発してしまうはずだが、シュナイドはオスロガルムの上半身だけを狙っていた。
それにより足元にいるカステオとは若干空間が開いているため、エレーナの氷で十分その身を守ることができた。

ステイビルはこのシュナイドの攻撃によってオスロガルムが無事でいられるはずがない……そう信じていた。
このブレスは、ボーキンに襲い掛かっていた数体の魔物が一瞬にして蒸発してしまうほどの威力だったのをこの目で見ていた。
だが、ステイビルたちの希望は裏切られることになる。




シュナイドのブレスは、オスロガルムの周りを避けるようにして目標物には届いていなかった。






コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品