問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
5-57 生存者
「ステイビル王子……何も起きませんね……」
「そうだな……なんだか、どこかで見張られているようで……逆に不気味だな……」
だが、付いてきてくれているコボルトにも森の中に潜んでいる魔物がいないか探索してもらっているが、その気配は感じられないし確認できないという。
既に最初に精霊使いを助け出した場所よりも、奥に進んでいる。
一応警戒はしているが、王都の中に入ることを目的とするには、その途中で兵力を削りたくはない。
場合によっては進んで妨害があった場合には、その場所に拠点を設けて徐々に王都までのルートを攻略していくつもりでもあった。
今手に入れたい者は情報で、魔物の勢力や王都の状況など、魔物を討伐するために必要な戦力や作戦を練るためにも一つ一つ状況を確認していく必要があった。
この状況から推測するに、王国の反撃に合いこちらの方まで手が回らなくなったか、こちらに向かわせる必要がなくなったか……。
ステイビルは考えたくない推測も頭の片隅にある箱の中にへと、ひとつひとつ得た情報と推測を仕舞っていく。
さらにステイビルたちは距離を稼いでいく、次第に見覚えのある王国を囲む石の壁が見え始めた。
「いよいよ……だな。各員、注意を怠るな!!」
ステイビルはもう一段階警戒度を上げるように、後ろを振り向いて付いてきた兵たちに告げる。
そして、再び前を向いて歩ぎ出そうとしたその時……
「ステイビル王子、少しお待ちを」
そう話しかけてきたのは、傍に居たコボルトだった。
「どうした?何かあったのか?」
「どうやら、仲間が人間を見つけたようです……いま、こちらに向かってきているようです」
すると、数分が経過したころ茂みの中から一人の男性がコボルトと共に姿を現した。
その姿を見た、最初に保護した精霊使いがその者の名を呼んだ。
「ジュイル!!」
街道に降りてきたよろける騎士に肩を貸し、その身体を支えた。
「シモン……無事だったのか」
「ジュイル、あなたこそ無事で……大きなケガはなさそうね?」
ジェイルと呼ばれた騎士は、シモン逃がしたシモンが無事であることにホッとして力が抜けて崩れ落ちそうになる。
だが、その行為を気力で込んで見せた。
シモンの背後から現れたその姿に、王宮騎士団に所属する兵として決して情けない姿は見せられない。
「ジュイルといったか……身体は大丈夫か?」
声をかけられジュイルは腰に下げた剣を身体の横に置き、拳を地面につけて膝を折り頭を下げる。
「ステイビル王子……はい、問題ありません。ですが、与えられた命令の西の王国に関しては……」
ジュイルは申し訳なさそうに、ステイビルの言葉に返してみせた。
ステイビルは知っていた。
王宮騎士団の者たちは王国の中でも最強の戦力の存在で、そのことが彼らの誇りであり総てだった。
最強の盾であり最強の剣であるべき騎士団の者が、命令を何一つ遂行できなかったことは、その誇りを酷く傷付けていることが感じられた。
ステイビルは相手の誇りに気を使いつつ、状況を確認した。
「よい、気にするな。それよりも命が助かって何よりだった……それと、魔物に襲われたと聞くが倒したのか?」
「いえ、倒すことはできませんでした……ですが、自分一人の命を守ることくらいは問題ありません」
「それでよい……それでいいのだ。生き延びることを考えろ、決して命を粗末にするな」
「わかりました、王子の命令とあらば!」
その答えにステイビルは満足に頷いて答えた。
そして、ジュイルをマギーの宿まで連れて帰る役目をシモンに命じた。
戦力に余裕がないため、二人だけで戻ってもらうことになるが、これまでの状況を理解しているシモンも決して不満はなかった。
「あ、王子……一つ忘れておりました」
「どうした?」
「はい、身を隠していた場所から王都内の様子を伺っておりましたが。魔物たちが城に向かって集まっている様子がうかがえました」
「それは……いつ頃の話だ?」
「本日のことです。その後、このコボルト様に見つけていただき助けていただきましたので」
「わかった。ありがとう……あとはゆっくり休んでくれ。そしてそのまま拠点の防衛にも力を貸してやってくれ」
「かしこまりました!……王子、他の者たちもどうかよろしくお願いいたします!!」
「任せておけ……今はゆっくりと休めるのだぞ」
そうして、ジュイルはシモンに肩を借りながらマギーの宿に向かって歩いていった。
「よし、いまがチャンスかもしれんな。いくぞ!!」
そうして、ステイビルたちは進行を再開した。
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