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山口 犬

5-56 魔神出現







「ギィー!!」

「グギャー!!」



四体の魔物によって、カステオの両腕両脚は抑えられている。
それを振り解こうとしても、魔物たちの力によって解くことが許されなかった。

カステオを助けようとしてくれた者たちは、既に命を刈り取られてしまっている。
それも、カステオを助けようとした行動をとったうえでの結果だった。


「……どうかご無事で!」

「あなたのもとで勤めることができて幸せでございました!」



様々な言葉をかけられて魔物に挑んでいった、彼らの最後の言葉だった。
だが、その時点で完全に包囲されており、退路は断たれていることは知っている。
それでもカステオの命を守るべく、彼らは剣に希望を込めて立ち向かっていった。

いくら王子を警護する屈強の兵士でも、人間には体力の限界がある。
一人に対して複数対で囲まれれば、体力の消耗も激しく損傷も大きい。
そして、いつしか魔物たちに囲まれてしまい餌食となり、主のために散っていった。


そんな者たちのためにこんなところで、終わるわけには行かないとカステオは必死に抵抗する。
動きを止めてしまえば、相手に狙いをつけさせるため動く個所は必死に身体を動かした。

だが、時間が経つにつれカステオはあることに気付く。
動きは封じられているが、止めを刺しに……カステオの命を奪いに来ないことに。



そのことに気付いた瞬間、魔物たちの背後。
床の上に寝転んで拘束されているカステオの足元に、黒い影が揺らぎ形となって表れる。

ステイビルはその姿に驚きを隠すことはできなかった、その存在は伝説の中の生き物であり魔物が存在していても架空の存在とされてきた。


「あ……悪魔!!いや、魔神!!」



『ニンゲンよ。無駄な抵抗はよせ』


「な、何しに来た!?お……お前の目的は一体なんだ!!」


魔神は押さえつけられたカステオ近付き、手にした杖を下に打ち付ける。
打ち付けた先には、フルプレートの鎧で守られてはいたが膝が反対に曲がってしまっていた。



「ぐあぁっ!!!」



『無力なニンゲンよ、我の名は”オスロガルム”。総ての魔物の頂点に立つ存在……お前に聞きたいことがある、素直に答えよ』



「だ……誰が。お前にはなすこと……がぁあぁっ!!」



カステオは言葉を言い終える前に、痛みで言葉が遮られた。
次は右腕の肘関節が、杖による殴打の一撃で破壊されてしまった。
膝もそうだが、痛みのせいか神経が切断されてしまったせいか、その先の抹消を動かすことができない。
きっと、皮でつながっているだけの状態となっているのだろう。

魔物のいうことを聞くくらいならばいっそ、部下たちのように殺してほしいと思う。
その裏では、この世にニーナをたった一人で残すことに対する不安な気持ちが浮かんでくる。
だが、ステイビルやキャスメルがいれば安心だった。
どちらかがニーナと一緒になり、この国を守ってくれることになるだろう。
特に、一番可能性が高いのはキャスメルの方だ。
あの王子は、きっとニーナのことが気に入っているはず。
この国を離れる際に、そうカステオはそう感じ取っていた

(だが、今は心も変わっているかもしれな……!?)


痛みを耐えるために考えていた思考は、オスロガルムの尖った杖の先が腹部に押し付けられたことによって途切れた。



『ニンゲン……勝手に死ぬことは許さんぞ』


その思考も痛みだけでなく、流れ出る血が体内に必要な量よりも欠乏していることにより意識が薄れていったことによるものだった。
そのことを知っているオスロガルムは、傷口に対して黒いタールのような粘液を掌から垂らした。


「がぁあああぁあぁああ!!!」


カステオの傷口が焼けるような痛みと合わせて、傷口をザラザラしたもので削られるような痛みが伴う。
王子である存在は決して弱音を吐はく姿を見せてはならない。
そういわれ続けて育てられてきたカステオは、多少の痛みならば声に出さず堪えることができた。
だが、いま受けている傷はそれを超える痛みが与えられている。
口からは自然と、痛みの反応となる声……音が喉の奥から発せられていた。



『ふん、さすがあの血を引く者たちの末裔よのぉ……だが、抵抗するだけ痛みはお前の身体と精神を蝕んでいく』


その声はカステオに届いてはいるが、それに対して何らかの反応を見せる余裕はなかった。
やがて意識が朦朧とし、顔の表情が力ないものに変わっていく。
それは、オスロガルムによってカステオの身体が支配されつつあることを意味していた。
そのことを確認した魔神は、一つ杖を床に打ち付けて満足そうにカステオに問いかけた。


『さて……そろそろ教えてお貰えるかな?あの剣はいまどこにある?』












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