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山口 犬

5-17 キャスメルの憂鬱7










「私は、この旅を最後まで終わらせたい……みんなと一緒に!……その先にきっと、ステイビル負けないくらいの……力付いているはず……たぶん」





「それはそうと……王子。いつまでそうされているおつもりですか?……あ!気を利かせて席を外した方がよろしかったですか?」


「ちょ……ちょっと!ルーシーさん!?」


ルーシーの悪ふざけに反応したのは、当事者のクリエではなくシュクルスからだった。
ルーシーはその様子を見て、声を出して笑った。

シュクルスの気持ちを知っているアリルビートは苦笑いをするが、せっかくよくなってきたこの場の雰囲気を壊さないように必死に努めた。



翌朝、キャスメルたちは再びポッドの家にいるエルフとドワーフの元へ訪ねる。



ナルメルは、部屋に入ってきたキャスメルの顔を見て昨日と違うものを感じる。


「あら、一晩でお気持ちが固まったようですね。何かあったのですか?」


「まぁ……いろいろとね。それで、今日はお願いと伝えたいことがあってやってきたのだが」


ナルメルは、キャスメルを目の前の椅子に座ることを勧めて自分も席に着いた。
そして、入れてあった紅茶を人数分用意し、話をする準備を整えた。



「では先に、伝えたいこと……という方をお伺いしても?」


「あぁ……昨夜ナルメル殿が尋ねられた、”どうして王選にさんかしているのか?”という件だが……」


ノイエルはそこで片手をあげ、それ以上のキャスメルの言葉を止めた。


「王子、そのことはもう結構です。こちらに来ていただいた時点でその答えはいただきましたわ。それに曇っていた瞳は、今では強い意志の力を感じております。それを見せていただけたましたので、それ以上お言葉にしていただく必要はございません」


キャスメルはそう言われ、その時の自分の顔と心の中は相当ひどい状態であったと、改めて恥ずかしく思う。
しかしそのことについては、昨夜何度もクリエたちに説得をされその思いを抱く必要はないと諭されていたため、すぐにその感情を消し去った。


「あ、キャスメル王子だ!」

「王子だ!」



二人で遊んでいたノイエルとチュリ―が、大人が話し合いをしていた部屋に入ってくる。



「ノイエル、いま大切なお話し中なの。終わるまで、外で遊んでいなさい」


どうやら仕事の時間になるまで、母親と遊ぶ予定だったようだ。
割り込んでしまったキャスメルは、申し訳ない気持ちになる。



「ねぇ……私と遊ぼっか?」


そう声をかけたのはクリエだった。

クリエは、昨日遊んであげられなかったことをチュリ―たちに詫びた。
もうこの場にいなくとも、クリエにはやることがない……すべてキャスメルに任せても大丈夫だという判断したうえでの行動だった。
そのことを告げると、キャスメルも笑顔でクリエの案を承諾した。



「ならば、私も付いていこう。人間がどういうように遊んでいるのかは興味がある」



そういって、オーサも二人の手を引くクリエの後を付いて部屋を出た。



「あ!わ、私も行きます!?」




クリエと仲の良いシュクルスも、慌てて一緒に部屋を出た。



「ルーシー……君は、いかなくていいのか?」


「う……ん。ちょっとね……」


「どうした?何かあった?」



ルーシーは、いつもと違い歯切れの悪い言葉を返す。




「本当にどうしたんだ?……あ。お腹が痛いのか?」

「違うのよ!……そ……の、わたし……子供……苦手……なのよ」


「な、なに!?……初めて聞くな……それ」





アリルビートはルーシーに自分の子ができた時にはどうするのかという疑問が浮かぶ。
仲間の警備兵から、子供の扱いが苦手なのは”自分自身が、まだまだ子供だからだ”という――なんの根拠もないが――話を聞いたことがあった。
いまそのことを言えば、ルーシーに吹き飛ばされることが目に見えているためアリルビートはそのことは黙っていた。





ノイエルたちの外の声が遠ざかっていく音が聞こえ、キャスメルにお礼を告げてナルメルは再び問いかけた。





「それで王子、私たちにお願いというのは?」


「すまないがモイス様のところへ案内をしていただきたいのだが……できるか?」


「もちろんですわ、王子。そのお言葉をお待ちしておりました」



そう告げて、ナルメルはキャスメルたちの案内を承諾した。






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