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山口 犬

4-121 裏切りの罠









ソフィーネは、意識はないが身体の機能として呼吸運動を続ける男の持ち物を調べる。
そこには、あの子たちに渡したお金の入った血が付いた小袋が入っていた。

ソフィーネは男の足首を持って引きずり、まだ燃える家の中にハンマー投げのように数回回して投げ込んだ。
男の身体は燃えて脆くなった柱を突き抜け、不安定だった建物は崩していく。
炎に包まれた瓦礫にの中、男は悲鳴を上げることもなく残り火の炎に包まれていった。


それを見届けた後、ソフィーネは小さな子を始め、できる限りの遺体を埋葬した。
それも一体ずつの穴を掘ることはできないため、大きな穴を掘ってこの村に住んでいた亡骸をできる限り丁寧に埋葬した。


朝日が伸びり始めた頃、ソフィーネは再び王都に向けて歩み始めた。








ソフィーネはあの時から、嘘を付くことに対して身体が拒否反応を示すようになった。
だが、諜報員という役割の中では”嘘”も一つの手段であり、それが自分や国を守るために必要なことは訓練の中でもソフィーネは度々、指導員であるメイヤやマイヤから指摘をされていた。
だが、あの日の罪に似た感情をソフィーネはその後まで引きずってしまっていた。

二人は冷静に見えて、マグマのようなソフィーネの感情を凍結させる訓練を与えた。
高度の位置から滝壺の中に身を投じさせたり、トラップの仕掛けられた暗闇の洞窟を進めたりと様々な手を使って感情をコントロールする術を身に着けさせた。
訓練の成果が実り、ソフィーネは嘘を付くことも含め、感情をコントロールする術を身に着けた。
その方法は、感情の凍結――
自分の感情が揺らぎそうになった時、この方法によりソフィーネは感情を凍結させ情報の漏洩を防ぐことができた。





そして今、ソフィーネは自分の心を凍結させている。
その指導をしたメイヤとマイヤだからこそわかる反応を見せていた。

メリルもメイヤの言葉に何かを感じることがあったのだろう。
攻撃の手はメイヤに向けたまま、意識はソフィーネの反応に向けている。




メイヤが、ハルナとメリルを家の外に待機をさせ建物内を捜索したその後……ソフィーネは二人の前に姿を見せ安心させた。
と同時に、口元の前で人差し指を立て、声を出さないように指示をした。
ソフィーネは二人は別の建物の中に誘導し、簡単に今の状況を説明する。


『――メイヤが裏切っている可能性がある』


そう告げられたハルナは驚きのあまり声を上げそうになったが、その直前でソフィーネに口元を塞がれて声を出すことを免れた。
小声でソフィーネにそんなことはないと反論するも、そのハルナの言葉を制したのはメリルだった
メリルはこの中で誰よりも絆が浅く、この中で関係性を排除して状況を判断できる者として意思を示した。
ソフィーネはその行いに感謝をしつつ、これからの行動を簡単に説明をする。
まずは、二人は身を隠した上で、ソフィーネがメイヤの行動を束縛する。
だが、ソフィーネとハルナはメイヤのことを知っているためどこかで感情的に非常になり切れないところもあると考え、メリルは次の段階としてメイヤの相手をすることを名乗り出た。

ハルナは今の状況に言いたいことがあったが、二人がメイヤを敵として判断しているためそれに従うことにした。
自分一人のわがままで、ほかの二人を危険な目に合わせるわけには行かない。
もし、ソフィーネの言うことが本当ならば、今までの中でもヴェスティーユたちと対峙したくらいの最大級の危険度に類する相手を敵にすることになる。


(でも……もし、何かあったときは……)


ハルナは心の中に別な思考を用意し、ソフィーネの指示に従いメリルと共に別の建物の中に身を隠した。


外では、静かな攻防が繰り広げられている、ソフィーネがメイヤに仕掛けているのだと判断した。
だが、それも一瞬にして終わっていた、メリルは窓から外の様子を伺う。
メイヤがソフィーネを追いかけて、行く姿が見え他の家の中に入っていく姿が見えた。
メリルは、メイヤを負って出ていこうとする。ハルナはそれを止めようとしたが、メリルは大丈夫といってメイヤの後を追って外に出ていった。


そして、メリルはメイヤの後ろを取り、事実を確認しようとした。
そこに、ソフィーネとハルナも姿を見せていく。







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