問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
4-117 ソフィーネ5
再びソフィーネの家の中――
先ほどの三分間のやり取りは、退屈すぎる村の中にとってちょっとした娯楽のようなものだった。
さらに言えば、ソフィーネのことを気に入らないものからしれ見れば、どんなことにせよ”負けた”という事実が楽しくて仕方がない。
決して笑っている奴らは自分がやってもソフィーネには勝てはしないのだが、彼らにとってはマイヤが自分たちの代わりにソフィーネを任してくれた……そんな気分に浸っていた。
マイヤもそんな者たちが喜んでいる意味を感じ取ったが、それに対して特になにも言うことはなかった。
ここに来る前に、どんな村なのかはすでに調べてから訪れている。
もちろん、そこに住む住人の性質についても調べがついていた。
その結果、決して子供に誇れる大人……いや人として誇れるようなものではない者が多く住むことは判っていた。
今回はの目的はそういう者たちをどうこうするというものではない。
ソフィーネだけが目的で、自分たちの仲間としての適性があるかどうかの判断をするだけだった。
この家の中には、ソフィーネとマイヤの二人だけ。
父親も同席したいと願ったが、マイヤは丁寧に力強くそれを断わった。
ソフィーネを欲している王国と、金額的な交渉をしたいと強欲な顔に書いてある。
マイヤが水の精霊使いと思われるような冷たい突き刺さる視線を向けられ、父親は渋々と母親に連れられて家の外に出ていく。
マイヤは家の周りに誰かの気配がないことを確かめ、テーブルを挟んで悔しそうな顔を見せるソフィーネに話しかける。
「さて……と。もう呼吸は落ち着いたわね?それじゃ、私の質問に答えてもらうわね」
悔しさの裏で、先ほどの対戦を頭の中で思い返しながら検証していたソフィーネの思考は一時中断された。
マイヤの最初の質問――『何故、強くなろうとしているのか』
ソフィーネは照れた様子で、その答え口にしようかどうか迷っている。
だが、聞かれたことに対して素直に答えるということが敗者に課された罰。
答えなければ、自分が嫌いな嘘をつくということになる。
ソフィーネは数回深呼吸を繰り返して腹をくくり、先ほどのマイヤの質問に答える。
それに対する答えは、”弱い者を守りたい”だった。
ソフィーネはその答えに対し、マイヤが表情を変えずに優しい顔で納得してくれたことに安心感を覚える。
こんな甘い考えでは、笑われてしまうのではないかという恐れがあった。
弱みを握られればそこに付け込まれてしまう、この村ではそんな大人が多い。
そのことを素直に話すと、マイヤはソフィーネの考えが間違っておらず正しいことだと言ってくれた。
ソフィーネの気持ちはほっとしかけたが、先ほどまで自分の全力を出しても掠ることさえできなかった人物に対して、再び敵意を浮かび上がらせて目の前のメイドを睨む。
殺気にも似た雰囲気が再びソフィーネから感じたことに、マイヤは目を細めて笑いながら軽く受け流す。
そして、マイヤは次の質問を投げ掛ける。
――『王国についてどう思うか』
この質問に対して、ソフィーネは否定的な感情しか持っていない。
どんなに自分たちの村が苦しくて、野盗などの集団にわずかな食料や人が奪われたときも、到着したのは事件が起きて二日後。
一日かけて呼びに行き、一日かけて戻ってくる。
当然、近くにその者たちの姿はなく、奪われたものも戻ってくる可能性は低い。
これに関しては、王国から常駐する兵を置くことが提案されていた。
だが、この村の者たちはそれを拒否した。
理由は、いずれかは自衛ができるように訓練を施すため、それに参加させることが条件としてあげられていた。
しかし村人は、他人が行ってくれるものであればその行為を受け取り、自分から差し出さなければならない場合はそれを拒んだ。
要は面倒なことをしたくない……ということだった。
それに、村に警備兵が常駐されるといろいろな面で”面倒なこと”になると、様々な理由をつけて監視されることを拒んだ。
弱いものから奪っていく……これは村の外から来ても、村の中でも同じことが起きている。
だが、それでいいと思っている者がこの中には大勢いた。
そいフィーネはそんな村に住んでいることを恥じ、”弱いものを守っていく”という気持ちは、ここから芽生えたのだとマイヤは推測した。
そして、マイヤはこれが最後の質問だとソフィーネに告げる。
「ねぇ、あなた。いま、殺したい人……いる?」
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