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山口 犬

3-165 夢の中でみたもの









何度かゆっくりと息を吸って、吐き出していた息を言葉に変えた。





「……今、夢を見てたんです」




「夢……ですか?」





サナは、不思議そうにブンデルに声を掛ける。




「それで、それはどんな夢だったの?」




興味を持ったエレーナが、ナルメルたちよりも早くブンデルに質問をした。






「えぇ……そこは暗い空間の中でしたが、フワフワと水の中に浮いた状態のようでした」



「……」



ゾンデルは黙って話しを聞き、その続きを待つ。






「自分以外の”誰か”が、会話をしていた気がします。命に関わるような内容だった気が……」




「……それはどのような?」



「すみません、そこまでは。夢の中ですし、そこまでハッキリ聞き取れていた訳ではありませんので」





ナルメルの質問に対して、打ち切るように答えるブンデル。






「そうでしたか……何か今回の現象のヒントになればと思ったのですが」








ブンデルは悪くはないと思いつつも、軽く詫びた。




話しはこの後も続いたが、結局ブンデルが回復した以外の進展はなかった。
そのため、一旦この場はブンデルの容体が安定したことが確認できたためこの場は解散となった。















そして、その夜……


部屋の外からも物音が聞こえなくなった真夜中。


窓からはカーテンの端から青白い月の明かりが漏れている。






「サナ……起きてる?」


「え?あ、はい。起きておりますよ……眠れないのですか?」






その言葉を聞き、隣で寝ていたブンデルは身体を起こした。
そして、はだけてしまったサナの肌に毛布を掛けてあげた。




ブンデルはベットを降りて、近くあったイスに腰かける。


その様子を気にしたサナも身体を起こし、毛布で体の全面を覆い身体を起こした。
ブンデルの顔が、カーテンから漏れた月の明かりに照らされる。




その顔は、何かを知ってしまった顔だった。
その表情から、サナはブンデルに問いかけた。



「ブンデルさん……何かわかったんですね?」





「あぁ……判ったよ。自分が誰なのかもね」







サナは急いで服を着て、ベットの上から降りた。




ろうそくを一本灯し、お茶を淹れてブンデルの話を聞く体制を整える。
部屋の中に紅茶の良い香りが立ち込め、明かりにより視野が広がりブンデルの気持ちは落ち着きを見せ始めた。



「それで、本当は……どのような夢だったのですか?」




「それはね……」




ブンデルはサナに、夢の中で聞いたことを話した。



自分が、親と一緒に命が消えかけたこと。
大きな存在が、二人を助けてくれたこと。

その際に母親がこの世界で生きるためには、その大きな存在の傍に居なければならないことと。



……そして、このことを他の者には話してはいけないと言われたこと。




サナは、最後のことを聞いて話してしまったことを心配したが、ブンデルが一人で抱えるには辛い事実だったのだろうと思いそのことは口にしないことにした。






「……それで、あの術式はなんの魔法だったのですか?」



「あの術式はは”マジックアロー”という魔法のものらしい。攻撃系のものみたいだ、聞いたことはあるんだけど使える人は見たことがないな……」



「ドワーフの中でも、聞いたことのない魔法ですね……エルフの方だけが習得できる魔法かもしれませんね」





今度別な場所で、その魔法を試してみようということになった。



このことをサナに話したことによって、ブンデルは気持ちが落ち着いた。
内容については、現時点で二人だけの秘密にしておくことを約束した。




そのまま二人は再び、ベットの中に戻っていった……が、二人はそこから眠ることはできなかった。







――家の外から争う音が聞こえてくる






「……なんだ!?」





ブンデルは飛び起きて、カーテンの外を見る。






村の端から火の手があがっているのが見える。
窓を開けると、遠くで叫ぶ声と金属同士がぶつかり合う音も聞こえる。


サナも後ろで服を着て、外に出る準備を整える。



廊下の方から誰かが出ていく音がして、ブンデルも部屋の外に出た。
するとそこにアルベルトとステイビルが支度を整えて向かおうとしていた。



「ステイビルさん、これは一体!?」


「わからない……いまソフィーネを先に行かせて我々もそちらに向かうところだ。行けそうですか?」




そのタイミングでサナも準備が整い、部屋から出てきた。



「はい!大丈夫です」





その言葉にステイビルは頷いて、ハルナとエレーナも準備が整ったためそのまま火の手があがっている方へ向かった。





戦えるエルフは現場に向かい、そうでないエルフはステイビルたちが進んで行く反対の方へ走っていく。


幸いなことに、村人の全てがこの場所に戻っていなかった。
だが逆に、侵入者への対応の人数も通常より少なくなっていたので防衛力は通常よりも低い状態だった。






争いが起きている領域から少し離れた場所にステイビルたちは到着し、そこにはソフィーネが小さなエルフの子供と一緒にいた。




「ソフィーネさん!」



ハルナが遠くから声をかけ、その声に気付いてこちらに近付いてくる。





「この騒動は一体?」




ステイビルが、状況の確認を依頼したソフィーネに確認をする。




「襲撃です。相手は二十人くらいの人間です、多分ですがエルフをさらいに来たのではないかと思われます」




小さなエルフが泣きながら、ソフィーネの脚にしがみついていた。












          

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