問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
3-91 塞がれた通路
サナは胸の前で両手を組み、懇願するようにブンデルに近づいて告げる。
「私たちの……ドワーフの町で、クーデターが起きました。ぜひ、あの王子に力をお借りしたいのです」
「な、何が起きたのですか?」
「あの後、私たちが人間と近づいたことに反対派の者たちが情報を嗅ぎつけ、私たちを襲撃してきました。ジュンテイさんたちが警戒をしてくれていたお陰で、被害はそれ程大きくなくてすみました。そして姉たちは、ステイビル様のところへ助けを求めにいくように託して、私を外に逃がしてくれたのです」
「お、それならステイビルたちはもうすぐこっちに来るぞ。先に様子を見てくると言って、先に出たんだ」
「そうでしたか!で、どこで待ち合わせを?」
「あぁ。ドワーフの町の出入り口のある箱の乗り物の前だ、そこで待ち合わせしている」
「サナ様……」
サナとその付き添いが顔を見合わせて、頷いている。
「それでは、その場所まで移動しましょう」
サナがブンデルに肩を貸す。
それを見た付き添いがその役目を変わろうとするが、サナはそれを拒んで自分が手助けをするといった。
ブンデルはよくわからない気持ちだが、少しだけ嬉しい感じもしていた。
肩を借りていると顔の距離が近く、秘かにいい香りがブンデルの鼻を癒した。
ブンデル達がしたときには、すでにステイビルたちは到着をしていた。
「遅くなって済まない……ん?あなたは」
「えっと……たしか長老の方でしたっけ?」
サナの横に立つ付き添い二人が、ステイビルの姿を見てお辞儀をする。
「ステイビル様、すみません。ブンデルさんが、私を庇って負傷してしまいました……」
確かにブンデルの服には多量の血痕が付いているが、今は出血している様子は見られなかった。
「……何があったのか、お聞かせいただいても?」
サナはステイビルの問いかけに応じて、今までの経緯を説明した。
「ヒール……そんな能力が、本当にあるとは」
「私たちは、この力を”魔法”と呼んでいます。これは誰でも使えるわけではないんです」
「なんだって!?誰でも使えるわけではない……だと?」
その言葉に反応したのは、ブンデルだった。
「え?あ、はい。魔法は、誰でも使えるわけではなく、素質があるものだけにしか宿らない力と考えられています。特に血族関係にその力は引き継がれていくようですが、まれに血族ではない者にも発現することもあるようです」
「そうなのか?だとすれば、私がエルフの村でやっていたやらされていた訓練とかは……!?」
「それは、わかりません。ですが、ドワーフの中ではこの力はそのように考えられています。今までのことを見てきても、この”法則”が外れているとは思えません」
「そうか……そう言えば、確かに」
ブンデルは思い返してみて、自分ができなかったことを無理やりやらされていたことを思い出す。
一緒に練習していたエルフは、いつも変っていた。
自分の出来が悪いから……そう言われ、素直にその言葉を信じていた。
後から練習を始めたエルフは、どんどんとできるようになり自分のことを追い抜いていく。
そのことは、ブンデルの気持ちを落ち込ませるには十分だった。
「ブンデルさん……どうかしましたか?まだ、どこか痛みますか?」
黙り込んで唸っているブンデルの横顔を、サナが心配そうに見つめる。
「いや、大丈夫……です……はい」
ブンデルは、さっきからサナの優しい視線に戸惑ってしまう。
(そういう魔法でも……あるのかな)
ブンデルの耳は赤くなり、少し熱を帯びるのを感じた。
「それでいま、町の中はどのような状態なのですか?」
アルベルトの言葉で、再びこの場に緊張した空気が戻ってくる。
「反対派の攻撃は、一時的に収まっています、私たちもその隙に町を出てきましたから」
「では、急ぎましょう。それで、あの昇降機は破壊されたんですよね?」
「それについては、別の入り口がありますので。よろしければ、早速ご案内いたします……」
付き添いのドワーフは、自分の後を付いてくるように指示し森の中を歩いて行く。
ブンデルは徐々に回復して、肩を借りることはなかったがサナに背中を支えられて進んで行く。
もう拒否することは止めて、その好意を素直に受けるようになっていた。
その様子を見て、エレーナは何かを感じ取っていたが今は黙っておくことにした。
そして、入り口まで何事もなく到着した。
しかし、ここで問題は起こった。
「……サナ様。入り口が開きません、どうやら反対側から塞がれたようです」
サナを焦らせない様に気遣い、淡々とした口調で付き添いが告げる。
「あの通路は、屋敷の奥に入らないと入れない場所……ということは、屋敷の中にまた入りこんできたってこと?」
「サナさん!?」
膝から崩れ落ちかけた、サナをブンデルが支え抱きかかえた。
この通路は、長老たちの安全を守るために用意された隠し通路だった。
その通路が塞がれてしまったということはその存在が反対派の者に、バレてしまったことを意味していた。
「しかし、もう入るところはないのか?」
「通常の出入り口はありますが、多分そこも反対派の者たちが待ち受けていることでしょう。少し危ないところにありますが、もう一つの通路に行ってみましょう……」
そういうと、付き添いのドワーフは山の絶壁の上に向かって行った。
          
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