問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
2-124 フェルノールとの記憶3
その日から、フェルノールはカステオの専属相談役として配属されることになった。
役職としては、従者よりもやや高い役職であるということでお触れを出した。
従者の仕事を押し付けられない程度で、比較的自由に王宮内を出入りすることができるためこの職の上級クラスが動きやすいと判断した。
これは、フェルノールからの希望でもあった。
そして、フェル―ノルの王宮内での生活が始まった。
まずは、王宮内を一人で歩いて行く。
すれ違う様々な人の様々な感情が、フェルノールの中に流れ込んでくる。
穏やかな者、恨みがちな者、弱気な者、怒りっぽい者、他人に興味が無い物……
(こんな気持ち悪いところ……姉様方が好みそうね)
そして、フェルノールはカステオの部屋に戻っていった。
「どうだった、城の中の様子は?」
「なかなかね、……良かったわ」
その言葉が、褒め言葉ではないことにカステオは気付く。
「そうだろう……な。王になるということは、そういう者たちの上に立たなければならないということなのだ」
「ふーん、人間も結構大変なのね」
創ってくれた母様を離れてから、自由気ままな生活を過ごしてきたフェルノールにとって、ここでの人々が抱く様々な思惑は吐き気を催すものばかりだった。
「幼い頃からこういうのを見てきた。以前は、私も酷いことをしてきたのだ。人を平気で傷付けてたり、人の命を軽視ししていたのだ」
「今は、そうではないと?」
「心を感じれる、フェルノールならばどうだ?お前から見て、私はどう見えている?」
「まぁ、嘘は言っていないわね。その分、他の人間たちよりはマシにみえるわよ……何か、きっかけでもあったの?」
ずっと立ちながら話していたフェルノールは、来客用のソファーに座り、足を組んでカステオに問いかけた。
そのフェルノールの仕草にも動揺せず、カステオはしっかりと目を見て誠実に対応しようとしていた。
「最初は、妹のニーナが誕生したことが大きな影響を受けたのだと思う」
ニーナはカステオの五つ下で、その守りたい可愛さにカステオは今も溺愛している。
故に、この王国内の争う風潮から遠ざけてあげたいと思うようになった。
できればそういったすべてのしがらみは、全てカステオが受け入れてニーナには何の心配もなく生きていて欲しいと願った。
「他にも何か、きっかけがあったのかしら?
「実は幼い頃ボーキンという側近の警備兵に、友人の家族の命を助けられたことがあった。その頃は、自分が気に食わないことがあれば私の命で罰していた……今考えると恐ろしいことを平気でしていたんだな」
「ボーキンさんに助けてもらったことがきっかけで、考え方を改めたの?」
「いや、そのことで変わったのはまだ後のことだ。そのことで良かったのは、友人や家族を殺さなくて済んだということだ。ボーキンが、私に黙って勝手に牢からその家族を救い出していたのだ。その時は勝手に出したことに対して、ボーキンを罰したのだ。私の警備から外させてな」
「それから、ボーキンさんという方とは?」
「うむ……見かけたり、噂を聞いたりはしていたが話を交わすことはない。いま私は、別なことでボーキンに恨まれているのでな……」
はカステオが恨まれているときの話をしたとき、本当に寂しそうにしているのがわかった。
フェルノールは、生まれて初めて誰かのために助けてあげたいという気持ちが芽生えた。
「それで、恨まれている理由というのは?」
カステオは、ビルオーネのことと剣のことを話した。
それによって、セイムが殺されてしまったことも……
「へー、そんな剣があるのね……その剣は今どこに?」
フェルノールの関心は、人の欲の争いから生まれた悲劇ではなく、籠を受けた何らかの力を持つという剣のことだった。
「今は、私が管理している。そうだ、フェルノールならこの剣の秘密が何か判るかもしれないな!」
そういって、カステオは自分の部屋に隠していた剣を持ち出してきた。
――!?
その剣を前にした途端、フェルノールの身体から黒い霧が蒸発し始めた。
「フェルノール!?」
カステオも目の前の現象がその剣の原因だと気付き、剣をフェルノールから遠ざけた。
「大丈夫か?」
フェルノールの身体が蒸発していないことを確認し、カステオは声を掛けた。
「な……何なの、その剣!?私の身体が溶かされたわ!?」
そこで、フェルノールは黒い物を浄化する力があることが分かった。
聞くと本来は、剣に所有者を見つけて認めないと力が発揮できないと聞いていたが、単独でも少しは力が発揮されていることが分かった。
「……ということは、これを持っているのはマズいな」
「でも、国宝なのでしょ?」
「そうだが、お主が消えてしまってはいろいろと困るのだ!」
またしてもフェルノールは、カステオから心地良い波動を感じた。
「……その剣をカステオが持っていると知っているのは、ビルオーネからその剣を取り戻した息子の”ビルメロ”だけだったわね」
「あぁ、そうだ」
「その方に預けてみたら?そして、あなたの配下にしておけば、遠くに行くこともないでしょうし他の警備兵にもわたらないんじゃないの?」
「確かにそうだが……良く分からない人物に、国宝の剣を預けるのは」
「では、一度私が会って確かめてみるわ。……もしもの時は、私の力で言うことを聞かせてみせるから……」
そしてビルメロを味方に引き入れ、カステオは剣を預けた。
フェルノールが見たところ、欲は強いがそれは純粋に上を目指しているとのことだった。
ビルオーネのような裏切りなどがないとわかり、強制的に従わせることは止めることにした。
剣は預け、その力を試すという名目で、貸し出すことにした。
ビルメロも、もし使いこなせればという気持ちになり、その案を承諾した。
そこから、フェルノールはカステオの思いを組んでこれからの王選に向かい、協力していくことになった。
          
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