問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

2-52 計画性






「た……大変失礼しました!?」


ドイルは急いで、応接室に飛び込んできた。


どうやら簡単に取り次がない様にしていたのは、ドイルの命令だったようだ。
ここ最近、どうでもよいアポイントが多いとのことで取次ぎを制限するように警備兵に伝えていた。



しかし、今回の件がこんなに早く動くとは思わず、警備兵に連絡していなかったというのがドイルの言い訳だった。



更にドイルは言い訳を続けようとしたので、ルーシーは話しを遮ることにした。




「わかりました。それよりも早速、討伐について計画を立てましょう。今まではどのような作戦で行われていたのですか?」



「討伐の際には四~五人程度のメンバーを三組で、山の中を捜索し発見次第討伐させておりました」


「その際に、何か注意するべきことはあるのでしょうか?」



「いいえ、特には。見つけ次第討伐するという命令だけです」



「え?」


「え?」




ルーシーとドイルは驚いて、お互いの顔を見る。




「あのぉ……それで、今までの損害はどれくらいの程度だったのでしょうか?」




クリエが、止まった時間を進める。



「討伐の度に、死傷者が数名出ております。が、その者たちは訓練が足りなかったためです。我々警備隊は、いかなる状況においても対応できる肉体・精神・技術を持っておらねば、市民を守ることが出来ませんので!」





――バン!


ルーシーは机を叩いて立ち上がる。



「あなたは……貴方は人の命を何だと思っているのですか!?無策で挑んで、大切な命が失われていくことの重要さが理解できていないのですか!」


「現に生き残って帰ってきた者もおります!その者たちは鍛錬により己を鍛え、いかなる場面でも生存できるように力をつけていたのです!!」




「……では、負傷した際の状況を、あなたはどの程度検証して理解されているのですか?その後の討伐で、どのくらい損害の程度を軽減できているのですか?」



「む……そ、それは」




ドイルは口ごもる。

過去三回程討伐隊を組んで挑んでいるが、毎回一定数の死傷者が出ている。
中には経験豊富なものもいたし、ドイルがよく面倒を見ていた者もいた。


悲しくないわけではない。



そこは自分たちの力不足であると、訓練をより厳しくすることだけしか行ってこなかった。
その者たちの敵を討つには、相手の殲滅しかない。


それには己の身体を鍛え上げるしかない、そう考えていたことを告げた。





「確かに、訓練の必要性はわかります。ただ、大切な兵の命を守るために、状況分析や作戦といった手段も必要になってくるのです」



エレーナは、そう付け加える。



ドイルは今までの無策であったことを反省し、それにより消えていった命にたいして申し訳ない気持ちで胸が潰れそうになる。




その様子を見て、ルーシーは落ち着いて話す。



「ドイルさん……今回も今までと同じやり方で行うのであれば、我々は辞退させて頂きます。そうでないのであれば、もう少し話し合いましょう。どうなさいますか?」




「亡くなった者たちの敵を討ちたいのです。どうか、ご協力を……」



ドイルは頭を下げて、お願いする。





「わかりました。では、まずはもう少し詳しい状況をお伺いしてもよいでしょうか」



ルーシーはそう告げて、冷静に話し合うことにした。



コボルドは、昼夜問わずに襲い掛かってきていた。
どうやら、こちらが動きを止めていたり油断していたりしているときに襲ってくることが分かった。


コボルドにも接近戦や遠くから仕掛けてくる者もいて、状況を見て襲撃していた。





「そう考えると、やはり指令を出している魔物がいると考えた方がいいですね……」



アルベルトが、状況を分析する。




「アルベルトさんの仰る通りだと思います。その魔物は知能は警……ゴホン。ある程度知識を持った魔物のようですね」




ルーシーも、アルベルトの意見に同意した。




「だとすると、人員の数を増やしすぎるとかえって狙われやすくなる可能性がありますね」



ハルナも、数で押すことの危険性を指摘した。




「では、討伐隊は人員を分散させ過ぎない感じで、四~五人の構成で二つに分ける方が良さそうね」


その提案をしたのは、カルディだった。
固まり過ぎても、的にされてしまう危険性が高い。
二つの隊に分けて、遠方から補助をする形をとる方法を提案する。


そして山脈の入り口に拠点を設置し、そこから討伐に向かうことにした。
何度か、隊を進めていき徐々に状況を把握して、大きな戦に備えることとした。
その際に、後方支援は情報を集め魔物のボスを探し、運が良ければ仕留めるという大きな流れを作った。




「わかりました。では、警備隊からは私も同行し、経験者三名を出します」



精霊使いからも、腕に自信があるアルベルトやアリルビートも兵として参加することにした。



この場所にはいなかったが、メイヤは他の仕事があるようで、今回はソフィーネがハルナの付き添いから同行することになった。




「では、各自準備に取り掛かりましょう。出発は明後日でいいですね?」





ルーシーがそう告げると、一同は承諾した。




今回は、ハルナ達の装備や備品については王宮精霊使いから付与されることになった。
アルベルト、シュクルス、アリルビート、ソルベティとソフィーネの装備も同様に与えられた。






そして、出発当日。

一同は王国を出て、大きな街道を馬車で進み目的の山脈の入り口を目指した。





          

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