色気より食い気の俺が料理上手の幼馴染に『毎朝、お前の作ったみそ汁が飲みたい』と言ったらすぐ同居することになった

三葉 空

29 まさかのライバル登場!?

俺と結菜はまだ高校生だけど。

それでも、最高の夫婦だと思っていた。

しかし……

『実家に帰ります』

朝目が覚めた時、テーブルにその書き置きがあった。

俺は何かの間違いかと何度も目をこすって見たが、事実は変わらなかった。

「おーい、結菜?」

アパートの部屋中の至ると所を探して見るが、結菜の姿はない。

「結菜!」

窓ガラッ。

「結菜!」

棚ガタッ。

「結菜ああああああぁ!」

食器ドンガラガッシャン。

「はぁ、はぁ……ゆ、結菜……」

俺は息を切らして四つん這いになり、半ば絶望する。

実家に帰ります。

それは妻が夫に離別を告げる時の常套句だ。

それで即離婚という訳じゃないけど。

大体、そのまま別居して、離婚に繋がるケースが多い。

「ゆ、結菜……俺が何をしたって言うんだ」

二人で過ごした幸せな時間が脳裏をよぎり、涙がこぼれてしまう。

「そうだ、電話をしてみよう」

プルルル……

『……もしもし、ミーくん?』

「ゆ、結菜か!? 今、どこで何をしているんだ?」

『えっ、私は……やっ、あんっ!』

「なっ、ど、どうした!?」

『ちょっ、ちょっと、そんな所を舐めちゃ……あんっ!』

俺はあんぐりと口を開ける。

まさか、嫁が浮気エッチしている声を聞くことになるなんて……

「……お、おい、結菜。そいつの名前は何だ?」

『へっ? ポ、ポン太だよ』

「ふざけた名前だな……」

『そ、そうかな? 可愛いと思うけど……んやぁ!』

クソが! 下手をすれば、俺よりも結菜が気持ち良さそうにしていないか!?

こ、これが間男のテクってやつか……

「ゆ、結菜。俺とそいつと、どっちが大切なんだ?」

『えっ? ちょっと迷うけど……ミーくんだよ。んあああぁん!』

「そこは一切迷わないで欲しかった!」

『ミ、ミーくん? もしかして怒っているの? 私が勝手に実家に帰っちゃったから』

「いや、怒ってはいない。ただ、悲しいだけだ」

『ごめんなさい。だって、ミーくんが気持ち良さそうに寝ていたから……あっ、ダメそんな……あんっ!』

もう、限界だ。

「……今からそっちに行く」

『へっ? ミーくん?』

「結菜……すまん」

俺は静かにスマホの通話を切った。

そして、心を鬼にする覚悟を決めた。

「……さて、行くか」

俺は玄関ドアを開けた。







結菜の実家は俺のすぐお隣だ。

「あれ、お兄ちゃんだ! 久しぶり~! 結菜ちゃんは?」

「おう、日向か。結菜は実家に帰っているよ」

「そうなんだ。ていうか、何でそんな風に怖い顔をしているの?」

「日向、俺は今日、犯罪者になるかもしれない」

「え? ちょっと、エッチな犯罪だけは勘弁してよ~」

「違う! 俺は最低の間男に鉄槌を下すだけだ」

「間男って……何の話?」

「みなまで聞くな。俺にもプライドってもんがある」

「よく分からないけど、後でウチの方にも寄りなよ」

俺は日向に背を向けて結菜の実家の前に立つ。

ピンポーン、とチャイムを鳴らした。

しかし、返事はない。

「もしや、既に……」

その時だった。

「――あぁ~ん!」

庭の方から声がしてハッとした。

おのれ、クソ間男め。

まさか、結菜とお外で……許さん。

俺だって、まだしたことないのに。

怒りの炎をメラメラと燃やす。

「あぁ~ん、ダメよ、ポン太ぁ~!」

いざ、裁きの時。

「この間男めええええええええええええええええぇ!」

俺は勢い良く叫びながら庭に突っ込んだ。

「へっ? ミーくん?」

そこには結菜がいた。

俺以外の奴と仲睦まじくたわむれて……

「……何だ、そいつは?」

「ポン太だよ。かわいい豆しばなの♡」

「アンッ」

結菜に抱きかかえられたそいつは元気よく吠えた。

「お~、湊人くんか。どうした?」

「あ、お義父さん。いや、結菜が急に実家に帰るって言うから……あの、犬を飼い始めたんですか?」

「ああ、そうだよ。ウチは子供が結菜だけだったから。居なくなって寂しくてね。母さんとも話して、ついに飼うことにしたんだ」

「アンッ」

「うふふ、可愛いでしょう?」

「じゃ、じゃあ、電話の声は……」

「ん? ポン太と戯れていた声だよ」

「よ、良かった~……」

俺は激しく脱力する。

「ごめんね、ミーくん。私、どうしてもこの子に会いたくて。ミーくんも一緒にって思ったけど、すごくグッスリ寝ていたから」

「まあ、昨日の夜もぶっ通しだったからな」

「もう、ミーくんってば♡」

「ハハハ、仲が良い夫婦だなぁ」

お義父さんが笑ってくれる。

そして、心に余裕が生まれた俺は、

「よーし、よし。ポン太、よろしくな」

谷川家の新しい家族に歩み寄って、手を差し出す。

ポン太はじっと俺に顔を見つめて、それから手を見た。

「アウッ!」

「あいて!?」

まさかの噛みつきを食らった。

「こら、ポン太。ダメでしょ?」

「アンッ」

「ミーくん、大丈夫?」

「あ、ああ。平気さ」

俺はじっとポン太を見つめる。

奴もまた、どこか好戦的な目で俺を見つめていた。

「……ふふ、まさか犬がライバルとはな。それもまた面白い」

「ミーくん?」

「結菜。一緒にまた、こいつに会いに来よう」

「本当に? 嬉しいな」

「ああ。男同士、積もる話もあるだろうからな」

「えっ?」

不敵に微笑む俺のことをポン太はじっと見つめている。

新たなライバルの登場に、俺は心を躍らせた。

「ポン太よ、勝負だ」

「あ、かけっこするの? じゃあ、私が審判をするね」

「結菜、すまんがお遊びじゃないんだ。そうだろ、ポン太?」

俺が言うと、ポン太が『何言ってんだ、こいつ』みたいな顔をしていたけど、気にしないことにした。






          

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