危機的生活

増田朋美

自分の体も動かせない

早いもので、お琴をならいはじめて13年が立ちました。お琴は、単に遊び心で習っていましたが、単なる趣味ではなく、いつの間にかライフワークになり、爪革も赤から白に変わって、つまり、専門家用を使用するようになりました。
そうなると、自動的に師範免許というものが交付され、一応、先生として開業してよいことになりました。
しかし、去年の夏から新たな問題が浮上しました。て汗が酷いのです。ひどいときは、手のひらからぼとぼと汗がおちてしまう。そしてなにより、致命的なのは、お琴の爪が外れてしまうことでした。それのせいで、長時間練習ができない。さらに、爪が外れて回りの人にも迷惑がかかるし。お稽古中は、全身あせびっしょりです。汗を押さえる薬品なども皮膚科でもらいましたが、効果はありませんでした。
とにかく、て汗がひどいので、美容外科とかそういうところにいきたいと、親に申し出ましたが、汗はみんなかくものだと、一蹴されてしまいました。もう親に相談すると、意味がないので、やめることにしました。あの人たちは、私が言いたいことを最後まで聞いているようで聞いていないんです。て汗が酷い、演奏に支障がでる、そういっても信じてもらえません。
医者にいっても、同じでした。いくら苦しいといっても、体に異常がないから、といわれて追い出されてしまうんです。
汗だけではなく、睡眠時間に急に暑くなって目が覚め、自分の体温で暑いと感じる、更年期のホットフラッシュにそっくりな症状も現れるようになりました。しかし、布団から出るとものすごく寒く、布団の中は体温で暑くてあせびっしょり。だから、洋服で寝るのはやめました。リサイクルショップで、絽の寝巻きを買い、それを着て寝ています。そっちの方が、パジャマよりよほど涼しく、楽。
最近は、胸の一部、心臓よりすぐ上のエリアが腫れていたくなったり、鎖骨の下などにグリグリができたりしていますが、どうせ信じてもらえませんので、そのままで放置しています。もう病名もどうでもよいから、はやく死にたいな。そればかりかんがえてしまっています。
昨年はそうやって体調の悪い一年でしたが、今年はどうなんだろう。夏にならないとわかりませんが。そういえば首にネックレスをしたような、痛みというか、変な感覚になったことがありました。
どうせ誰にもわからないのですから、放置しておくしかないのです。
仕方ないので、お稽古にいくときはできるだけ、理想的とされる色無地を着ていくことにしました。
他のおでしさんとの釣り合いもありますが、色無地であれば師匠から文句を言われる可能性は減ります。
それなら、少し安心してお稽古にいけます。

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