美しきこの世界

Rickey

三十五

「夢、それ、いるんじゃないのかい?」
 卓袱台で昼食を取っていたオッカは、茶碗を片手に夢にそう声を掛けました。玄関に向かおうとしていた夢は、オッカの視線の先にある茶箪笥に目をやりました。
「そうかも」
 夢はそう答えると、茶箪笥の上に置かれた携帯音楽プレイヤーを手に取り、暖簾をくぐって小走りに玄関へ向かいました。夢を見送ったオッカは卓袱台に視線を戻し、皿に盛られたコロッケをサクッサクッと箸で二つに割りました。
 夢が玄関に来ると、履いた靴のつま先で地面を蹴っていたケンシが視線を上げました。
「あー、それええねん。ありがとう」
 夢が手に持つ携帯音楽プレイヤーが目に入ったケンシは、笑顔でそう言いました。
「無いと自転車乗られへん、って言ってなかった?」
 夢はいたずらっぽく笑いながらケンシの真似をしました。違和感しかない方言にケンシは笑みを浮かべ、「そやねんけどな」と答えると、正直な気持ちを話しました。
「今は誰の声も歌詞も聴きたないかな。曲、ってわけじゃないけど頭ん中でずっと流れてんねん、別の世界が。やから他の人の曲聴くと気持ち悪くなる。今はまだええわ」
 ケンシが笑顔を見せながらそう言うと、夢も同じ笑顔を浮かべ小さく頷きました。
「そっか。心の中でおば様の素敵な曲が流れてるのね」
「うん。あ、それありがとう。じゃあちょっと行ってくるわ」
 寂しさを残しながら頬笑んだケンシは夢にそう声を掛けると、靴箱の上にある自転車の鍵を手に取り、ズボンのポケットに入れました。
「じゃ、行ってきます。あぁ、そうや」
 ケンシは夢に挨拶をした直後に話そうと思っていた事を思い出したのですが、夢に視線を向けたまま、話す事を止めてしまいました。
「ん? どうしたの?」
「うん。いや、ええわ」
 そしてケンシは夢に笑みを見せ、玄関の扉を開けました。
「頼み事あったけど自分でやるわ。んじゃ行ってくるわ」
「あ、いってらっしゃい!」
 ケンシは夢の挨拶を聞き終えると、ゆっくりと玄関の扉を閉めました。
「あっつ」
 地面を炊き上げて出た熱気が全身を飲み込み、ケンシは思わず顔を背けました。雨の少なかった梅雨は明け、クイナの丘にも夏がやってきました。そしてそれを知らせるように、カタカタジーカタカタジーカタカタジー、まるで音のシャワーのように無数に降り注ぐ蝉の声が太陽の光と混じり合い、クイナの町を満たしていました。
 例え、この世界に何があろうとも、時は進むのです。まるでおばあさんを置いてゆくかのように、季節は進んでゆくのです。
「じゃあ行こっか、ばあちゃん」
 ケンシは自転車に跨ると、クイナの町を走り出しました。
 生まれた町の過去を辿り、おばあさんに会いに行きます。

 ケンシが自転車のブレーキを掛けながら下るこの道は、オレンジ通りへと繋がっています。なんでもないただの道なのですが、想い出があり、その中にはおばあさんも居ます。ケンシはそのままオレンジ通りを進み、魚屋の前を横切りました。小学生の頃、学校帰りにここを走っているとミゲロやオッカによく怒られました。一度だけアッカンベェをしながら逃げようとして、太ったおじさんに正面からぶつかった事がありました。その時はそのおじさんよりもオッカが怖くて逃げたのですが、陸上部だったオッカに一瞬で追いつかれ、大きなゲンコツをもらいました。
 ふと溢れ出た懐かしい時代に寂しさを感じていると、駄菓子屋のふくよしが見えてきました。クイナの町に住む子供達にとってふくよしは最新情報を得る場所であり、エネルギーを補完する場所でもあるのです。
 キキーッ。
 ケンシは自転車をふくよしの前で止めました。

 小学校低学年のケンシがおばあさんと一緒に駄菓子屋のふくよしにやって来ました。胸の高さの木箱を背伸びして覗き込んだケンシは、どれにするか熟考し始めました。
「百円までだよ」
 おばあさんにそう宣告されたケンシは苦虫を噛み潰したような表情で「エーッ」と声を上げました。ケンシは今日、おばあさんに出来る限りの胡麻をすっていたのです。予算の増額を諦めたケンシは眉間にしわを寄せながらガラスの蓋を開けました。そして幼い手をグッと伸ばしたケンシは、どんどん焼、モロッコヨーグル、円盤チョコ、甘いか太郎、のし梅さん太郎、それらを一つずつ木箱から取り出すと、ガラスの蓋の上に置いてゆきました。
「おばちゃん、すもも一個!」
 ケンシは木箱が置かれた台の向こう側に立つユウリにそう注文しました。ユウリは「ん」とだけ返事をすると、レジの横に置かれた透明の丸いケースの中に立て掛けてある菜箸を取りました。そのケースの中には酢漬けのすももがゴロゴロと入っています。ユウリは菜箸ですももを一つ取り出すと、小さなポリ袋に入れました。
「十円」
 ユウリはケンシに値段を言うと、さらに大きなポリ袋にそのすももを入れました。そしてガラスの蓋に置かれた駄菓子に目をやると、「全部で百円だね」と伝えました。するとケンシは、他に欲しい駄菓子がないか木箱の中を覗いて確かめ出しました。
「もういいのかい?」
 ケンシの耳に、おばあさんの声が聞こえました。
「まって」
 ケンシは駄菓子から目を離さないままそう返事をしました。そして、一番欲しいものを確実に選ぼうと駄菓子一つ一つを吟味し始めた時、ふと壁に掛かった商品が目に入り、そのまま黙ってしまいました。駄菓子から心を奪い、ケンシの瞳を輝かせたのは発泡スチロール製のソフトグライダーでした。それも種類も二つあり、プロペラの付いた手なげ式とゴムで飛ばすゴムとばし式です。そしてケンシはどっちにしようか勝手に悩み始めました。
「足らないだろうさ」
 おばあさんは厳しい声でケンシの背中にそう言いました。ケンシは間髪を容れず顔を上げ、苦虫を噛み潰したような表情で「エーッ」と声を上げると、総攻撃とばかりにおばあさんに今の気持ちを目で訴え出しました。それでもおばあさんは厳しい顔でケンシの目をキッと見つめ、聞きませんでした。ケンシは泣き出しそうな顔で「えー」と声を漏らすと、選んだ駄菓子に目をやり、口を尖らせながらガラスの蓋に置いた駄菓子をジッと凝視し出しました。どちらかを選ばなければいけません。ケンシは少し悩んだのですが、壁に掛かったソフトグライダーを手に取りユウリに見せました。
「じゃあこれにする」
 ケンシは弱弱しくそう言いました。
 するとおばあさんは目蓋をグッと閉じて「んー」と唸り、少しするとユウリに視線を向け、「ん、んん」と声を掛けました。ユウリがその視線に気付くと、おばあさんは更に「ん、ん」と唸り声を出し、ガラスの蓋に置かれた駄菓子に視線と顎を向けました。ユウリはその意味を理解したのかオッカに意地悪そうな笑みを向け、ガラスの蓋に置かれた駄菓子を全て大きなポリ袋の中に入れてゆきました。
「甘いね、あんたも」
 ユウリがそう言うと、俯いたおばあさんは大きく頬を上げて「ほんと」と呟きました。
「え? 何で? 買われへんで?」
 そう言いながらも本当は分かっているケンシは、嬉しさを隠し切れませんでした。

 ケンシは懐かしさに頬を上げると、自転車のペダルを踏み込み、また走り出しました。
 駄菓子屋のふくよしを後にして、そのまま少し進むと木製のおしゃれなドアの店が見えてきました。入り口に掲げられた看板には『花梨』の文字がありました。

 小学校低学年のケンシはおばあさんと喫茶店の花梨で休憩中です。ケンシは大きなグラスに入っているストローをくわえながら、ミックスジュースを少しずつ飲んでいます。果物の甘みと香り、砕いた氷のひんやり感、それを長く楽しみたいケンシはいつもこうやって飲むのです。そしておばあさんの前には空のコーヒーカップと冷たい水が入っていた空のグラスがあります。アメリカンコーヒーを早くに飲み終えたおばあさんは、店に置かれている雑誌を読みながら、ケンシが飲み終わるのを待っていました。
 ズズズー、ズズズズズ、ズーズー。ケンシがストローで遊び始めました。
 雑誌の写真や文字を指で辿りながら読んでいたおばあさんは一瞬で厳しい顔になり、ケンシに鋭い視線を向けました。
「止めな」
 ブクブクぷく、ブクぷく、ブブブぷぷ。今度はグラスの中で泡がいくつも出来ました。
「怒るよケンシ」
 ブクズーブクズーぷくズー。
 ゴツンッ。
「イッタァ! ンンン」
 おばあさんからゲンコツを貰ったケンシは痛みを堪えながら唸り声を漏らすと、ジンジンと痛む頭をゴシゴシゴシと擦りながら、「もぉ」と呟きました。

 自転車に跨りながら喫茶店を眺めていたケンシは、ゴシゴシと頭を擦りました。そうすれば懐かしいあの頃へ戻れるような、そんな気がしたのです。笑みを浮かべたケンシは俯くと、自転車のハンドルを強く握り、再び走り出しました。
 昔から変わらないクイナの町。一度町を離れたことがあるケンシでも、こうして道を走っているだけで所所にある記憶が蘇ってきました。心に残る過去に触れながら思うままに自転車を走らせていたケンシは、印象的な光景をふと思い出し、オレンジ通りを離れて丘の頂上へ向かう道に入りました。この道に入ると落ち着いた民家の風景が広がっていて、足元に流れる石畳も梔子色や杏色や蒲公英色、そんな穏やかな色に移り変わりました。上り坂に入ったケンシは増して行くペダルの重さを感じながら石畳の中を進んで行き、少しして現れた十字路を右に曲がりました。すると今度は温かさを感じる古い建物や道が現れ、その中でも一際時代を感じさせる銭湯の前でケンシは自転車を止めました。百年以上続くこの銭湯には今でも沢山の子供達が遊びに来るのです。

 小学校高学年のケンシはナイロン製の大きな手提げ袋を握り締め走っています。空の太陽は傾き始め、ぼやけた鏡のような石畳を鈍く白く、てらてらと光らせていました。空と同じ色に染まるケンシは銭湯へ続く乾いた石畳をタッタッタと足音を鳴らしながら走り、前を歩くケンジとフクとフミに追い付こうと必死でした。何とかケンシは前の三人に声が届く距離まで追い付いたのですが、ケンジ達は銭湯の暖簾をくぐり、見えなくなってしまいました。みんなと一緒に入りたいケンシは銭湯の前にやってくると、そのままの勢いで入口の大きな暖簾を掻き分け中に入ろうとしました。
 ドンッ。
 ケンシは暖簾の向こうから出ようとしていた銭湯の客にぶつかってしまいました。
「いってぇ」
 そう声を零したケンシはぶつかった目元を押さえ、そのままの姿勢で客が居るであろう方向へ向かって「すいません」と声を掛けました。しかし、その客は何も言葉を発しませんでした。何が起こったのか分からないケンシはショボショボとした目を無理矢理開き、目の前の様子を確かめようとしました。
「ケンシ」
 その声で反射的に大きく開いたケンシの目に、怒った顔のおばあさんが飛び込んできました。
「あ! ごめ」
 ゴツンッ。
 気付いた瞬間にはもう遅く、ケンシはおばあさんから特大のゲンコツを貰いました。ケンシはジンジンと熱くなった頭をゴシゴシゴシと擦りながら、「最悪や」と呟きました。
「お年寄りだったらどうすんだい! お客さんに迷惑掛けんじゃないよ!」
 ケンシは頭を擦りながら俯くと、ぽつりとした声で「ごめん」と謝りました。そしてゆっくり顔を上げると、先に銭湯に入ったケンジ達の姿が暖簾の隙間から見えました。今の状況に気付いたケンジ達は暖簾の向こうでニヤニヤニヤニヤと笑っていて、ケンシの目にその顏がチラチラチラチラ入ってきます。
「ほんとに」
 おばあさんはそう呟くと叱るのを止め、家の方へと歩き出しました。話が終わったと思ったケンシは頭を擦りながら、静かに逃げるように暖簾をくぐりました。
「ケンシ」
 突然自分を呼ぶ声が聞こえたケンシは、おばあさんの方へ振り返りました。その瞬間おばあさんは、光る何かをフワリとケンシに向かって投げました。上手にそれを受け取ったケンシは手のひらを開いて見てみると、そこには五百円玉がありました。驚いて目と口を丸くしたケンシが顔を上げると、おばあさんはもう家の方へと歩き出していました。
「遅くまで遊ぶんじゃないよ」
 おばあさんは背中のまま、振り返らずにケンシにそう声を掛けました。
「ありがとう! ばあちゃん!」
 ケンシはしわしわの笑顔でそう声を上げると、五百円玉を握り締めて銭湯の玄関に入りました。
「じゃん!」
 ケンシは開いた手のひらの五百円玉をケンジ達に自慢げに見せました。下駄箱を閉じて松竹錠を引き抜いたケンジは、ケンシの手のひらに目をやりました。
「お、金持ち」
 ケンジはケンシに合わせて笑みを浮かべ、驚いたようにそう声を上げました。
「今日は俺がジュースおごったるわ!」
 上がり框に座ったケンシが靴を脱ぎながらそう言うと、ケンジは思わず笑ってしまいました。
「そうか、じゃあ頼むわ!」
「おう!」

 遊んだ後の銭湯と買い食いはケンシ達の鉄板コース。当時のケンシは明日を思うことなくその日その日を一生懸命楽しみ、そしてそんな日日が一生続くんだと思っていました。
 自転車のサドルに腰を掛けたまま銭湯を眺めていたケンシは、ハンドルに肘を乗せて俯くと、ゆっくり深呼吸をしました。ふと気が付けば、呼吸を後回しにしていたのです。
 ケンシはもう一度大きく深呼吸をし、再び自転車を漕ぎ始めました。
 丘の頂上に続く道は次第に町を外れてゆき、自然の多い道に移り変わって行きました。同時に古い石畳が並んでいた道はアスファルトの道に変わり、左を向けば草木の向こうに海が、右を向けばクイナの町が眼下に広がります。こんな風に少し場所を変えただけで雰囲気が大きく変わるクイナはとても小さな町なのですが、おばあさんとの想い出で溢れています。そして、想い出の中のおばあさんはとても元気で自由です。だからケンシは、この町へ来ればそんなおばあさんに会える、当たり前のようにそう思っていました。
 ケンシは胸が苦しくなりながらもペダルを強く踏み込み、丘を登り続けました。
 そうして誰も居ない丘を順調に進んで行き、あともう数分で頂上に着く、そんな所まで来た瞬間、キキィッ、ケンシは突然ブレーキを掛け、自転車を止めてしまいました。そして自転車に跨がったままアスファルトにあるマンホールに目をやり、今見ている光景と、ふと現れた過去の記憶を重ねてゆきました。今、ケンシの瞳に映るのは、とても穏やかで懐かしい記憶。そこに居たのは、マンホールの上で屈み込む幼い頃の自分と、ケンシの横に立つおばあさんでした。

 保育所の体操服を着たケンシは屈み込み、マンホールの蓋に顔を近づけていました。小さなケンシが見つめる先には、鎌状の腕を顔に付けて畳み、羽を広げ威嚇するカマキリが居ました。どうやらカマキリはケンシを敵と見做したようで、鎌をクイックイッと小さく動かし威嚇するのですが、不思議な生き物の姿に興味を持ったケンシには伝わっていませんでした。寧ろケンシはそんなカマキリに向かって人差し指を突き出し、反応を楽しんでいました。そしておばあさんはそんなケンシを見守るように、そっと眺めていました。
 暖かく晴れた日の午後の、二人と一匹だけのほのぼのとした時間が流れていました。
 興味の尽きないケンシは更にカマキリの懐に入るほどに人差し指を近づけました。するとカマキリはマンホールの蓋の熱さに限界を感じたのか、それとも反射的に動いたのか、高く振り上げた鎌をケンシに向かって素早く何度も振り下ろし始めました。しかもカマキリの突然の反撃は命中し、ケンシの人差し指をガッツリと挟みました。急な展開にビックリしたケンシは目と口を大きく開け、カマキリを遠ざけようと腕をブンブンと振りました。当然カマキリの挟む力はケンシの腕の力に比べれば弱いので、カマキリはすぐに草むらの中へポンッと飛ばされて行きました。ケンシは驚いた表情のまま人差し指を凝視し、傷一つ無かった事を確かめたのですが、それでも怖かったケンシは泣きそうな顔でおばあさんを見上げました。真剣な顔をしながらその様子を見守っていたおばあさんは手を腰に当てると、これからのケンシの成長を想い、少し厳しい言葉を掛けました。
「泣くんじゃないよ」
 するとケンシの表情は徐徐に崩れてゆき、そのまま泣き出してしまいました。
 こうなると分かっていたのですが、どうしても厳しく出来ないおばあさん。
「しかたないねぇ」
 おばあさんはそう言いながらケンシの側に屈み込みました。
 そして、顔をクシャクシャにして泣くケンシに笑い掛け、優しく頭を撫でました。

 滲み輝くケンシの瞳から、ぽろぽろ、ぽろぽろ。
 閉じ込めていた悲しみが溢れ出ていました。ケンシは体を支えていた足をペダルに掛け、アスファルトの上を力強く走り出しました。
 風が運ぶ、ぽろぽろ、ぽろぽろ。
 ケンシは大切な人が居なくなったこの世界がとても怖いのです。
 立ったままサドルに座らず、ケンシは力一杯ペダルを踏みました。
 ぽろぽろ、ぽろぽろ。話したい事や聞きたい事、伝えたかった言葉が頬を伝いました。
 人通りの少ない道だと知っています。
 だから、少しだけ。
 ケンシは子供のように涙の声を出し、おばあさんの死を受け入れました。
 そしてケンシは力強く未来を見つめ、前へ進んで行きました。

 チャララララララン、チャララララララン
 チャラランランラン、チャラランランラン
 介護ベッドの上部を起こし、座った姿勢のおばあさん。
 その隣でケンシはオクラホマミキサーのリズムに合わせて歌っています。
 チャララララララン、チャララララララン
 チャラチャンチャンチャラチャラ、チャンッチャンッチャン
 笑顔のケンシは、ベッドの上で伸ばしているおばあさんの両足首を手に取って、歌のリズムに合わせて上下に左右に動かしたり、開いたり閉じたりしています。これをするといつもおばあさんは大きな笑顔になってくれるのです。
 チャラーチャチャンチャン、チャラーチャラー
 チャラーチャチャンチャン、チャラーチャラー
 その中でもおばあさんが一番の笑顔を見せてくれるのは、足を組んだ時なのです。どうしてなのか、ケンシには分かりません。でもその笑顔を見つけた時、ケンシはこれほどまでに幸せな気持ちになれた事はありませんでした。
 チャンチャンチャンチャン、チャンチャンチャン
 チャラチャンチャンチャラチャラ、チャンッチャンッチャン
 おばあさんが笑ってくれるのなら、ケンシは何度だって繰り返すのです。
 チャララララララン、チャララララララン
 チャラランランラン、チャラランランラン

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