あなたが好きでもいいですか

文戸玲

これからのこと

 お母さんは私の気持ちをまだ認めてくれていない。きっとそれは我が子を思う親の愛情ゆえだと割り切ることにした。でも,それが私が私の気持ちをないがしろにする理由にはならない。私には私の生き方があるし,人には人の幸せの形があるのだと思う。だから,いつかお母さんにも分かってもらえたらいいな。
 私には解決しないといけない問題はたくさんある。ずっと仲良くしてきた菜々美とも話が出来ていない。どういうつもりで写真を撮って送りつけていったのか分からないけど,菜々美には菜々美の思いがあったのだと思う。そして,それはもしかすると私の為を思っての行動だったのかもしれない。そう信じたい。どちらにせよ,きちんと話をしてこれからも仲良しの関係が続けられたらいいな。
 エロがっぱは相変わらずだ。あの日,駅まで一緒に歩いた日のことはなかったかのようにあっけらかんとしていた。最後の文化祭の出し物を何にするかで熱い持論を展開していてクラスで冷めた目をしていたけど,なんやかんやでみんなこいつを頼りにしている。こんな私のことを好いてくれた。今でもそうなのだろうか。何でもない風にしているけれど,結ばれない辛さを私は知っている。きっと,こいつも辛い思いを裏に秘めているのだろう。私が言うのも変だけど,お前はきっといい人と巡り合えて幸せになれるよ。私が保証する。ダイヤの原石を見つける目だってあるんだから。だって私のことを魅力的に感じたんだから。今話している女子の胸元をちらっと見たことも私の中で留めておくよ。
 しばらく美月にも会えていない。レッスンで忙しいのだろうけど,やっぱり会えないのは寂しい。会っていない期間,何を考えていたのだろう。私は美月のことを好きでいるけど,美月はそうではなくなったりしていないかな。あんなに綺麗だもの。普通に男のことを好きになって,普通に幸せな道を歩むことだってできる。美月はどうして私のことを好きになったのだろう。そんなことを聞いてみたい気もするけど,私は美月を好きになった理由を聞かれてもきっとうまく答えられない。好きって,たぶんそういうことなんじゃないかな。
 普通ってどういうことなんだろうって考えることが増えた。多分,私は普通じゃない分類としてくくられるのだと思う。だけど,普通でなければ幸せになれないわけではないと思うし,悩むことは多いかもしれないけど,私は幸せだ。マイノリティって言われる人を今まで気の毒に思っていたけれど,案外悪くはないのかもしれない。だって,その人たちは幸せの形を見つけているのだから。私は私で,これからも自分の幸せを見つけていこうと思う。

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