あなたが好きでもいいですか
不登校
「最近元気ないじゃん。なんかあった?」
休み時間にもかかわらず自分の席に座り,何をするでもなく頬杖をついて窓の外を見つめていると,エロがっぱが声をかけてきた。どうしようもない下心丸出しのくだらない男だと思っていると,こうやって優しく声をかけてくる。よく分からないが,人をよく見ていて配慮ある行動をとれる男なのだろう。どうにも惹かれないしいけすかないやつなんだけど。
「美月ちゃんも学校来てないし。ほんと,茜がおれと美月ちゃんを結び付けてくれると思ってたから,ほんと拍子抜けだよ」
「結び付けるってなんだよ。なんとかこぎつけられたにしても,結ばれるかどうかはあんたの努力と生まれ持ったモノのよさが備わっているかどうかだよ」
「それって,戦う前から勝負ありってこと? ひで~。おれたちいっつも残り物だな」
「お前と一緒にだけはされたくない。どすけべおばけ。」
「おばけだと~。夜中に化けて出てやる~」
お化けを表しているのだろうか,うらめしやの格好をして意味の分からない言葉を続けてこちらに迫ってくる。その言葉を背中に受けながら,エロがっぱの優しさに胸を温かくしてその場を去ろうとした。でも,先ほどとは正反対の真剣なトーンの言葉が私を離してはくれなかった。
「てかさ,まじでなんで学校来てないの? 別にどうにかしてくれとかじゃなくて,ただ気になってさ」
答えに詰まった。真実を言うべきか分からなかったが,こいつになら言ってもいいかなと思ってつい口走った。
「モデル事務所にスカウトされて,レッスンとか芝居とか写真撮影とかがあって忙しくしてるみたいだよ」
そう言いながら,胸が痛んだ。そう,美月はモデル事務遺書に所属して活動を始める準備を整えている。それを知ってからしばらく,私は美月に会っていない。
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