あなたが好きでもいいですか

文戸玲

二人きり



 バス停から少し進んだところにある道を入っていくと,閑静な場所に豪邸が建っている。
 この場所に来るのは二度目だ。
 前回と違うのは,私の隣に菜々美がいないこと。そして,美月と二人で家に向かっていることだ。
 三時間の試験が終わったら帰宅なのがありがたい。
 今日は菜々美が来れないということだから,今日のテストの報告会と別れの挨拶ぐらいはしておこうと思ったのだが,「12時までに店頭に行けば半額でチェーン店のハンバーガーが半額で食べられる」という誘い文句に押されてトイレに行った菜々美には何も言わないまま学校を飛び出す形になってしまった。
 明日は事情を説明しないとな。いや,今日メッセージぐらいいれておこう。
 そんなことを考えながら歩いていると,目の前のガレージ付きの立派な家が見えてきた。
 玄関入ると,菜々美は急いで部屋へと促した。
 なんだろう。
 まるで何かに追われているみたいだ。
 時間には十分すぎるほど余裕はあるし,おうちの人にあいさつだって済ませていないのに。

「急いで,ママに見つかっちゃう」

 そんな言葉が美月の口から洩れた時,私は聞き間違いだと思い込んで聞き流していた。

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