神様、ごめんね

ロヒサマ

第十一話【美徳実目線での出会い】

 一昨日から色んな事がありすぎて、整理が追い付かなかった。映画に行って、事故になりそうになって、四葉のキーホルダー買ってもらって。翌日には先輩の前で大泣きしちゃって、次の日は奈良までお見舞いに来て。こんなにイベントが続いたことはそうそうない。何とは分からないが、何かが動き始めた感じがする。
「喉乾いたな。そう言えば部屋のすぐ横に自販機あったっけ」
 私はお財布を持って部屋を出た。その瞬間、誰が見てもそう思うであろう展開的な二度見をしてしまった。世中先輩!? 何でこんなところに。もしかして同じホテルに泊まってるの?
 じっと見つめるが、自販機の前に立っているのは間違いなく世中先輩だ。どうしよう。おばあちゃんがあんな事言うから変に意識しちゃうよ。にしても、何故先輩はあんなにコーラを睨んでいるの? 何か恨みでも? 謎の行動にハテナを隠せないでいたが、ふと手元を見ると、金額を示す電気文字が百五十円と示している。
「あ、もしかしてお金足りないのかな?」
 私はお財布から二十円を取り出し、そろりそろりと自販機に近づく。そしてコイン投入口にお金を入れてボタンを押した。
「え、なんでここに?」
 先輩が急に声を出す。驚かしちゃった。いや、でも私の方が驚いてる。まさかこんな所で先輩に合うなんて。どうしよう、パジャマ姿見られちゃった。どう思ってるんだろう。メガネ変じゃないかな。どうしよう髪の毛ちゃんと乾かしてなかった。だらしないって思われないかな。色んな事が頭を巡って、思考が追い付いてこない。でもあれこれ考えてる場合じゃないし、何か喋らなきゃ。

「ヤバイ、学年指導の谷内だ」
 何か話そうと考えていると、顔を上げた先に体育の谷内先生がこちらに歩いて来てる。もし見つかったら何て言われるだろう。逢引? ストーカー? 逆セクハラ?! 学校中の噂になっちゃう。それはダメだ。
 私は無我夢中で先輩の腕を掴み、自分の部屋に押し入れる。すぐに鍵を閉めて、壁に耳を当て、足跡が霞むのをじっと待った。徐々に歩く音も聞こえなくなり、ほっとした時気付いてしまった。ち、近い!先輩の顔がこんなに近くに! 私は思いっきり身体を離してしまった。急にどいたら嫌いな感じに見えちゃったかな?
 それよりこの状況どうしよう。一人であれこれ考えてる時、先輩がコーラを渡してくれた。変に緊張している上、喉も乾いていたから気にせず飲んだ。ボトルを返してから気付くのにそう時間はかからなかった。
 これって、関節キスだ。

 ボトルを渡す手、震えてしまった。変に意識してるって思われないかな。何でこんなに胸が高鳴るの? どうしよう、この気持ち。胸がきゅーってなる。ドキドキするのに、どこか穏やかな感じ。おばあちゃん、もしかして私、先輩の事。ってダメダメ。まだ会って一週間も経ってないのにそんな。それに私なんて相手にされないだろうし。何とかこの気持ち、誤魔化さなきゃ。

「ペプッシュコーラって、元々は胃薬だったんですよ」
 ひゃぁ。何言ってるんだろ私。誤魔化すために言ったとはいえ、どうでも良いこと言っちゃった。テンパってる、うん確実にテンパってるのが伝わってる。でも、こんな雰囲気は好きだ。もうちょっと話してたいな。このままこんな感じで、ゆっくり、些細な事でも良いから。あ、そうだ。
「もう少しお話していきませんか? 今日はブログ更新出来なかったから、映画のお話でも」

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