いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

友達の彼氏はわたしの彼氏


 その日はすぐにやってきた。人数あわせで顔を出すと約束をした合コンだ。男性陣は先に店に着いていると言うことだが,私たちは人数が揃ってから一緒にお店に入ることにした。
 合コンに参加する一人は,私と同じように彼氏がいるのに参加する。今日の合コンは,その子の彼氏の紹介と,そのつながりで彼から男性を紹介してもらうのが名目だ。
 ただ,平坦な道が続くわけがないのが人生というもの。

「ごめんね,私の彼氏自慢をしたいわけではないんだけど,これから合コンに参加できないっていうのもみょうにさみしい気持ち半分と,紹介したい気持ちとで・・・・・・。せめて新たな出会いの場だけは提供させてね」
「いや,うちらはうちらでこの状況を楽しんでいるから良いんだよ。それに,私なんて今週変な別れか足したばっかりだからもう次いっちゃえって感じ。奈々子も,彼氏の品定めしてもらったら良いよ」

 夏妃は私の方に目をやり,先日の中村さんのことを話した。「どこで繋がっているのか分からないもんだよね」と興味深そうに奈々子はうなずく。
 そうこうしていると,個室居酒屋に着いた。
 部屋を開けると愕然とした顔が一つ。合コンに参加した男性陣の中には,あろうことかトオルさんがいた。私もトオルさんと同じ顔をしている。さらに追い打ちをかけるようにして驚くべき発言が続いた。

「紹介するね。私の彼氏のトオルくんです」

 あろうことか,奈々子はトオルさんを指して紹介を始めた。
 一瞬にして体の温度が上昇し,頭が沸騰しそうになった。しかし冷静になる。一体,誰が悪いのだ?
 まずは話を聞かねば。私と同じ、人数あわせという状況もあり得る。いや,奈々子は確かに,「私の彼のトオルくん」と言った。


コメント

コメントを書く

「エッセイ」の人気作品

書籍化作品