いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

角部屋



 角部屋にたどり着くと,またカードキーを出してかざした。ホテルの部屋のように接触した瞬間に軽い音がして,ロックが解消された。ドアノブを回すと,一人暮らしには広すぎる玄関が現れた。
 遠慮がちに履を脱いでいると,白いスリッパが置かれた。

「汚いから,良かったら履いてください」
「そんな・・・・・・,私の部屋よりも実家よりもどこよりも綺麗ですよ。さすが飲食店をされるぐらいなので几帳面にされてるんですね」
「たまたま今朝掃除をしただけなんですけど,細かいところはあまり見ないでね。まあ,座って。コーヒーを入れてきます」

 そう言ってトオルさんはリビングへと私を案内した。これまた一人で使うには広すぎるソファに座らされた。ほど良い柔らかさで沈んでいく身体に身を任せ,コーヒーを引く香りを遠くから楽しんだ。

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