いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

お酒の通り道


 今の私の生活は失敗を犠牲に成り立っている。過去のことは振り返りたくはないのだが,そのような過去は誰にでもあるだろう。そして,人は同じ過ちを繰り返す生き物だ。特に私は。
 カラオケボックスに入ると高校生ぐらいの二人の男の人に手招きをされて,間に座るように言われた。そこにいた初めて見る人たちはきっと高校生ぐらいだったように思うが,土木系の現場の格好をした埃っぽいままの作業着の人もいたので,もしかしたら高校を中退した人か,高校を卒業した人もいたのかもしれない。いずれにせよ,その人たちがどういう人だったのかは分からない。その日以来会うこともせず,その日限りの関係だったから。
 先に来ていた私の友達は,はっきり言って今まで一緒に過ごしてきた人格とは別の物のように思えた。それがお酒の力によるものだと気付いたのは少し経ってからである。
 私がもうすぐ着くと聞いていた男たちは,私のために飲み物を頼んでくれていた。店員がそのドリンクを持ってくると,乾杯をしてまず飲み物を半分ほど飲むように言われた。何も考えずに口に含んだ私は,炭酸と甘さが混ざり合って爽快感のあるピンク色の液体をしっかりと飲んだ。喉を通って胃袋に液体が落ちるのが分かった。液体の通り道が分かるかのように温度が急激に上がった喉元をさすりながら,これがお酒なのだと初めて知った。

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