いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

また家で落ち合おう

 今日の仕事は早番だった。五時前にはオフィスを出て,出かける支度をした。着替えをしていると,夏妃が興味深そうに話しかけてきた。

「あら~気合い入れちゃって。今日はなにか特別な日になるの?」

耳に付けた品のあるが大きなアクセサリーをつまみながらニヤニヤしている。

「悪いね。実は彼に大事な話があるって言われているの。夏妃は彼が出来たら出て行けって言うけれど,私の方が先におめでたいことになるかもね」
「あらー,えらい前向きじゃない。まあ,私も今日はデートだから」

 お互いウキウキと準備をしながら一緒に部屋を出た。
 夏妃は今日,市役所に勤める男と二人で会う約束を取り付けたということで浮足立っていた。小学生の頃は足の速い子,中学生の頃はちょい悪な子,高校大学と少しづつ理想の相手は変わってきたが,大人になるとお互い現実的なことが視野のほとんどを占めるようになるねと言って笑い合った。
 今日は帰るか分からないけど,また家で落ち合おう,と合言葉のように言って別れた。

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