いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

死神の顔


 1人,冷たい風に打たれながら数々の思い出を思い返していた。
 たくさんのところに行って,たくさんの景色を見た。決して長くはない交際期間ではないが,多くの観光名所に言った。目の前の繁華街のネオンを見ていると,不意に去年の冬に行った神戸のルミナリエを思い出した。
 寒い寒いと言いながらホットコーヒーを飲んでいる私に,大丈夫だよと自分のコートをかけてくれた。あの時,優しいなとは思ったけれど,寒くない? とは聞いてあげられなかった。思いもしなかった。自分勝手な女だった。北陸に海鮮を食べに行ったり,温泉旅行に行った時も,すべて素敵な思い出とともに,自分の幼さをが浮かび上がっている。
 まだまだたくさんの思い出がある。どれだけ私にとって大切なことを残してくれたのだろう。
 ふと,携帯にたくさんのデータが残っていることを思い当たり,写真の保存画面を開いた。旅行もだが,家で二人で作った料理,かわいい寝顔,車を運転している姿・・・・・・
 なんでもない毎日が特別だった。
 さよならをするように,写真のフォルダからアルバムを削除した。電源を落とすと,画面には死神のような顔をした自分がいた。

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