いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

レストラン

 こうして私は今日ここにいる。おしゃれな格好をして素敵な男性と綺麗な夜景を見ながらレストランでディナーを取る。それだけで幸せな気分だ。
 席は窓際で,繁華街のネオンがきらびやかに輝き,まるでこのなんの記念日でもない一日を祝福しているかのようだった。いつもはギラギラしたこの町の光に憂鬱になるのに,誰とみるかでこんなにも捉え方が違うのかと思うと不思議な気持ちになった。
 ステキな時間とともにおしゃれな料理がたくさん運ばれてきた。ゆっくりと,時間をかけて過ごした素敵な時間だったけれど,前妻でウニといくらの乗った茶碗蒸しとメインディッシュでフォアグラを食べたこと以外は何を食べたのかはっきりとは覚えていない。ただ,その日は部屋でとろけるような夜を過ごした。
 彼はそのレストランがあるホテルに部屋を予約していた。始めから一緒に止まる算段だったのかは分からない。ワインをいくらか空けてほろよいの私たちは,一人で使うにしては広すぎる部屋に入った。
 部屋に入ると,後ろから抱きかかえられた。そのまま私たちは倒れこむようにしてベッドへ横になり,重なり合った。
 その夜はたまらなく最高だった。

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