いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

最高の食事

 その日の食事は最高だった。彼が頼んでくれる食事は面白くて新しい発見と好奇心に満ちるもので楽しかった。しかも私にとっては焼肉のコース料理は初めてだった。ドリンクのお代わりぐらいしか店員を呼ぶことは無いが,その都度料理の進み具合をみて次の料理を運んでくる様子や,塩肉を食べ終わった後の網を交換するタイミングなどは高級店でしか味わえない落ち着いた雰囲気と上質なサービスを感じられた。加えて,彼の話は面白かった。いや,正確には彼のする話が特段面白かったわけではなく,話したい,もっと聞いてほしいという気持ちに始終させられていた。よく,女性は話をしたがる生き物だとか,答えを求めているのではなくただ傾聴してほしいだけなのだとか言われていたがそんなことはないと思っていた。女性だって悩めば答えが欲しいし,解決策をスピーディーに出して最適解を一瞬で導き出す上司になりたいと思っている。ただ,この日はやはり一般的に言われていることは間違っていないと思った。私はこの日,話を聞いてもらって,傾聴してもらって嬉しかったのだ。気持ち良かったのだ。
 その日は美味しく食事を食べて,二軒目もいかずにそのあと何かをしたわけでもなく爽やかに帰った。レストランに行く約束を取り付けてそれで満足だった。私は彼に惹かれていることに気付いた。

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