いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

彼について③

 その日の彼といえば,私たちと同じようにビールを飲んでいた。お酒のペースは速い方だが,顔色一つ変わらない。飲むと笑い上戸になる人や泣き上戸,愚痴っぽくなったりスケベになったりといろいろに人に出会ってきたが,お酒を嗜んでも雰囲気が変わらないというのはそれだけで好印象だし,安心感も感じられる。
 男3人女3人の合コンは個室の焼き肉屋で開かれた。お店は主催者のキャビンアテンダントをしている夏妃が見つけた場所で,ずっと行きたいと思っていた場所らしい。夏妃は仕事柄海外へもよく出かけているが,交友関係が広くて繁華街の美味しいお店もたくさん知っている。夏妃が選ぶ店はだいたい外さないから,合コンで外れくじを引いても満足せずに帰れないことはめったにない。相手の男性も紳士的で話も上手いうえに聞き上手で,申し分ない一日となった。
 彼と言えば,女性陣の好みを聞きながらもオーダーを取ってくれた。一品モノやおつまみから始まり,初めて聞くような名前のお肉もたくさんオーダーしていたが,どれもおいしかった。あまりにも慣れたオーダーに「この店にはよく来られるんですか?」と問いかけたが私たちと同じように初めてらしい。ただ,彼はグルメで中でも焼肉や海鮮がおいしいお店を探しては行くのが趣味らしく,そのうちお肉の部位にも詳しくなったらしい。
 二軒目をみんなで回った後に珍しく三軒目と続き,その中の私たちは今度二人で彼の知っている美味しい焼き肉屋に連れて行ってもらう約束を取り付けた。

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