いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

彼について②


 雰囲気の良い個室で私たちはみんなと同じビールを頼んだ。ここが大切なところで,どうでも良いような男どもと飲むときには一杯目から焼酎を頼んだりもする。良い女を演出する必要がないと感じるとお酒を楽しむことを優先させるのだ。その場が楽しくないのかと言えば全くそんなことはない。愉快なのが,勘違いした男たちはそのまま飲ませ続けてお持ち帰りしようとすることだ。大概の場合はそのまま伸びて酒豪の美人につぶされて情けない醜態をさらすだけなのだが。
 この日はビールの日だった。確かにレベルの高い男たちが揃った日ではあった。どれぐらいレベルが高かったかと言えば,この酒好きの女集団の中でもとりわけ酒豪のキャビンアテンダントの女がかわいらしい守られるべき女性を演じるがためにカシスオレンジを注文しようとしたというエピソードがあるくらいだ。ちなみに彼女は着やせするタイプであり,温泉旅行なんかに行って裸体を見るとボート部で国体選手に選出されただけあってレスラーのような体つきをしている。
 私の友達について話をしてもしょうがない。彼についてだ。

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