いつまでも,いると思うな家に嫁

文戸玲

宴会は続く


 居合わせた義理のお兄さん夫婦と初めましての挨拶もそこそこに,BBQは幕を開けた。顔合わせや結婚前の挨拶で何度か両親と顔を合わせてはいたが,正直言ってこの親が得意ではない。お義父さんは気さくな人で饒舌でもあり,初対面の時でも話をしてくれてありがたかった。ただ,酒癖が悪い。吸引力の衰えない掃除機のように時間が進んでもハイペースで飲み続け,ご機嫌になっていく。いくら吸引力が衰えないと言ってもメンテナンスをしなければ何だってダメになる。この人はどうなるかというと,同じ話を何度も何度も繰り返し聞いてきたり,ものを倒したり,モラルもデリカシーも失ってしまう。「子どもの予定は?」ぐらいなら全然かまわないのだが,「夜はどうなんだ?」とか「夫でダメならお義父さんがいいことを教えてあげちゃう」だとか平気で息子の嫁にセクハラまがいなことを言っている。旦那は旦那であほみたいに酒を飲みながらバカ笑している。何がそんなに楽しいんだか。
 適当にやり過ごしてただ時すぎるのをやり過ごそうと思っていると,
「おーい,野菜切ってくれ。玉ねぎとなすがまだあっただろ」
とお義父さんが玄関に向かって叫んだ。しばらくしてお義母さんが顔を出すと,
「あんたたちね,自分たちのことぐらい自分でできないのかね。何か買ってくるでもなく冷蔵庫のものもおかまいなしに使っちゃって。私は召使じゃないんだからね。野菜ぐらい自分たちで切ってください。」
と一息に言い切った。それでも言い足らなかったらしくこちらに鬼のような形相を向けた。
「ほんと,好き勝手しちゃって。どこかよそでやってくれたらいいのに。食材も全部使って。いいね,何も気にせずできる人たちは」
お義兄さんの奥さんの方は我関せずといった様子でのほほんとしており,私は地獄の時間を過ごすことになった。
 BBQはまだまだ終わらない。

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