魔眼使いは冒険者に憧れる

カイン

太陽を護るもの

(これは昔、昔のかつてあった大国のお話)

我の名はラムセス。この大国である
砂漠の国「エルサレム」の初代王にして
最強の剣士だ。我がこの国を建国して
早50年、我ももう歳を取り、昔のように
剣を振ることも出来なくなった。だが、
別にそれを悔やんではいない。たしかに
あの頃の、皆から最強の剣士として尊敬の
眼差しを向けられることはなくなったが、
一国の王として、しかも、他の国以上に
強大な大国の王としてこの玉座に座って
いられるのだから、だから、別に悔いなど
ない、とても良い家臣たちに恵まれ、
国中の民が、我のことを慕ってくれる。
だから、このまま何事もなく死ぬことが
出来ると思っていた。なのに、なぜ………

そのことに気づいたのは本当に偶然だった。
ある日定期的に王宮を出て、民たちと
話をして回っていると、その土地の
大地主から最近困ったことがあると
言われ話を聞いてみると、最近墓荒らしが
横行しているというのだ。しかも、
荒らされている墓は皆、どれも、この国を
建国するときに死力を尽くしてくれた
我の同士やかつての戦争で活躍した
我が国の英雄たちの墓ばかりだった。
我はそのことに腹を立て、さっそく
次に狙われそうな元英雄の墓へと赴き、
墓荒らしが来るのを待っていた。
数時間待ち続け、今夜は来ないのかと
帰ろうと思った時に、巨大な物音がなった。
その物音を頼りにその場所へと行くと、
なんと、多数のゴーレムがいた。
ゴーレムはこの国では特に珍しいものでは
なく、民たちも、国が造ったゴーレムたちを
荷物運びや作業要因として重宝していた。
だから、なぜこんなところにゴーレムが
いるのか?と疑問に思ったが、よく
見てみるとどのゴーレムたちも、どれも顔
が違う、全部ところどころ違い、なにか
見たことのある顔のように思えて、よく
考えていると、どれも、墓荒らしにあった
死者たちにそっくりなのだ。どの、
ものたちとも、共に戦場で戦い歩いた
かつての仲間たちなのだ。その顔を間違える
はずなどない。でも、どうしてそんな
知っている顔のゴーレムたちがいるのか?
いまだにそれが、わからなかったが、
昔にある家臣から聞いた計画を思いだし
事実に気付いたのと、その家臣が目の前に
表れたのは同時だった。

家臣「これは、これは、ラムセス王。
どうして、こんなところに」

ラムセス「それはこちらのセリフだ!
バルビス!どうしてこんなことをした。
こんな非人道的なことをして、お前は
なにを考えているんだ!」

バルビス「はぁい?一体なんのことで
しょうか?私にはわかりかねますが。」

ラムセス「しらを切るきか、バルビス。
我は覚えているぞ何年か前にお主が
計画したあの実験をな。死者を媒体に
ゴーレムを造りそのゴーレムを使って
他国を侵略する。死者を媒体にした
ゴーレムはその死者の生前のステータスが
高ければ高いほど優秀なゴーレムになると」

バルビス「ほぅー、その実験を覚えて
下されているとは光栄です。なら、
しらを切るのはやめましょうか。
どうですか、ラムセス王、見てください。
この私の最高傑作たちを、このゴーレム
たちは、各々が、個人の考えを持っていて
自動で行動するのです。しかも、戦闘力も
一級品と来ています。最高ではありま
せんか。」

ラムセス「なぜだ、なぜ、そんなことが
出来るバルビス。それは、死者を愚弄
していることだと、なぜ理解できん。
それにもう戦争なぞ、しなくてもよく
なったのだ。我が国は豊かになり、
周りの国々とも同盟を結んでおる。
それになんの不満があるんじゃ。」

バルビス「はぁっ、不満しかないに
決まってるじゃないですか。死者を
愚弄しているだと、折角こんなに
良い素材があるのにそれを使わないなんて
そっちの方が死者を愚弄しているに
きまっている。死者たちも、きっと、
死んでもなお、この国のためになる
ことが出来て喜んでいるに決まって
いますよ。それに、同盟だと、なぜ
そんなものが信用できる。人など簡単に
裏切る。そんなもの信用できるわけ
ないだろう。だから、裏切られる前に
俺達から裏切ってやるんだ。大丈夫です
ラムセス王。このゴーレムたちがいれば
私たちが負けるはずなどないのだから、
だから王よ、考えを変えてはくれない
だろうか?」

ラムセス「ふざけるのも大概にしろ!
バルビス。今この国に、戦争をしても、
メリットなど一つもないのだ。
考えを変えるのはお主の方だ。
頼み、潔く自首をしてくれ、今なら
まだ間に合う。」

バルビス「なるほど。あなたの考えは
わかりました。やっぱりあなたは
変わられた。歳を取りすぎてしまった。
この国はあなたに任せるにはもう
荷が重くなってしまったみたいだ。」

ラムセス「なんだ、お前は一体なにを
言っているんだ。」

バルビス「すぐにわかりますよ。
すぐにね。」

ラムセス「おい!まて、バルビス!
話はまだ終わっていないぞ!」

そう言ってゴーレムと共に姿を隠した
バルビス。

その数日後、この国で反乱が起きた。
反乱を起こしたのはバルビスをリーダー
とする革命軍たち、革命軍のメンバーたちは
そこまで人数が多くなく最初は簡単に
鎮まると思っていた反乱軍も、バルビスの
あのゴーレムのせいで全てが変わった。
破壊しても破壊しても、次から次へと、
我が国の兵士たちを使ってなんぼでも
増え続ける。しかも、ゴーレムたちは、
疲れをしらず、睡眠や食事も必要と
しないのだ。そのせいで、今や我が国の
兵士は我一人となってしまった。
だから我はかけに出た。最後のかけだ。
この国を滅ぼすかわりにすべての元凶で
あるバルビスとそのバルビスが造った
ゴーレムたちを道連れにすることにした。
作戦は成功し、すべてのゴーレムも、
国も、何もかもがなくなった。だが、
我は最後にバルビスを殺すことを躊躇した。
だから、これは、我の罰なのだろう。
バルビスは自分の命を犠牲に我を素材
としてゴーレムを造りあげた。そして
ゴーレムと成り果てた我に最初で最後の
命令を下した。目についた者を命ある
限り殺し尽くせ。と、だから、最初の
方はまだ、少し意識があるうちは、
上を見上げ太陽を見るようにした。
何者も見ないようにそうして、いつか、
「太陽を護るもの」と呼ばれるように
なった。だれか、早く我を呪縛から
解放してくれ。その願いはある
一人の少年とその師匠によって、叶え
られることとなる。

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