魔眼使いは冒険者に憧れる

カイン

訓練開始③

41階層につき、エマさんは俺に言った。

「ここに出てくる魔物は二種類。てっ、
言うか50階層までは同じ魔物しか
出てこないんだけどね。」

「二種類?しかも、50階層まで?」

「君がそう思うのも、しかたがないよ。
なんせ、ここまで来た人は皆そう思う
からね。でもね、本当なんだよ。本当に
二種類しか出ないんだ。」

少し笑ってそう言うエマさん。続けて
エマさんは言った。

「でもね、魔物は同じでも違うところが 
あるんだ。わかる?」

「もしかして、行動パターンとかですか?」

俺は少し考えて言った。

「うん、流石だね。そう、行動パターン
だ。出てくる魔物の一つは
Bランクのブラッドコアデビル。
この魔物の特徴は空を飛んでいること。
それと、額の真ん中にあるコアだ。
このコアは魔力によって大きくなる。
迷宮には常に魔力が充満しており、
日に日に、このコアが大きくなる。
コアが大きいほどこの魔物は強くなり、
最大までいくとAランク相当になる。
たまにSランク相当になる個体もあるが、
そんなことはまあ、めったにないから
大丈夫だが。」

俺はその話を聞いて、ふと、疑問に
思ったことを聞いてみた。

「エマさん、それじゃ、その魔物は
無限に増えるんじゃないですか?
しかも、だんだん強くなるってことは
放っておくとまずいんじゃないんですか?」

「君のその疑問も、最もだ。たしかに、
最初のうちは、定期的に数を減らして
いたんだが、それも自然となくなった。」

「えっ、どうしてですか?」

「それはね、する必要がなくなった
からだよ。」

「する、必要がなくなった?」

「うん、なぜかはわからないんだけどね。
ブラッドコアデビルは一定の数まで増える
と、強い個体からいなくなってくんだよ。」

「いなくなる?」

俺は怪訝な顔でそう言った。

「うん、そう。いなくなるんだよ。
どこに言ったのか、なぜいなくなるのか?
それはまだ、わからないんだけどね。
だけど、いなくなるんだよ。なぜかね。
それは真実なんだ。だから、何もしない
のが、一番いいってことになったんだよ。」

俺は釈然としないながらもそんなもん
なんだな。と、その話に納得した。

「でね、もう、一体なんだけどね。
こいつが本題なんだよ。」

エマさんは明るい口調でそう話した。

「本題?それってどういうことです?」

俺は聞きかえす。

「うん、もう、一体はね、Cランクの魔物。
ブラッドゴブリンだよ。」

「ブラッドゴブリン?しかも、Cランク?
なぜ、そんな魔物が41階層に?」

そうだ。おかしい、ゴブリンは言わずと
しれた雑魚モンスターいくら強くなっても
それは変わらない。それがどうして?
俺は少し考えこむ。

「うんうん、そうだね。おかしいよね。
だけどね、君と同じで、そんなふうに
考えた冒険者たちが、何人も殺されているん
だよ。ゴブリンなんかにね。いくら
ゴブリンといっても、41階層なんだよ。
弱いわけないんだよ。ブラッドゴブリンの
特性は厄介なんだ。ブラッドゴブリンは、
血の匂いが特徴でね。私たちにはわから
ないんだけどね、ゴブリンにだけわかる
匂いで、死ぬと、さらに濃くなるんだよ。」

「匂い?」

俺はまた、疑問を浮かべる。

「そう、匂い。ブラッドゴブリンの血はね。
同類を呼ぶんだ。それが無限に続くと、
なると。どうなると思う?」

「それは、考えただけで恐ろしい
ですね。いくらCランクといっても、
雑魚じゃない。Cランクは冒険者で言うと
一人前だ。そんな魔物が無限に湧く。
それは、本当にとても恐ろしいですね。」

「ね?弱いわけないんだよ。気を引き締め
てね。」

さんざん、言われたことだが、今までで、
一番心に来た。エマさんの声は笑っていた
が、顔は笑っていなかったからだ。

「でも、何でそんな魔物が俺の訓練に
どう関係あるんですか?、もしかして、
血で集めて逃げるんですか?」

「うん、たしかに、逃げることも大事かも
知れないけどね。ちがうよ。その逆、
君には戦い続けてもらうよ。」

「戦い続ける?」

「そう、君には戦い続けてもらうよ。
ブラッドゴブリンと」

「えっ?」

俺はそんな変な声をだしながら、数秒
固まっていた。

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