騎士学園の忍びになる者よ

神港 零

始まりの時 Ⅴ


俺のお母さん…………………もとい、長官に呼び出されたのは、一週間前ぐらいに俺たちが起こしたある事件についてのことで俺は呼び出しをくらった。
俺の上司こと、加賀美霧江きりえは、正面のソファーでため息を吐いた。

「確かに私たちは有力者や有名人、事件の裏に隠れた真相を表に公開したお陰でネットでは色々と騒がれているわ」

「分かっています」

「国が認めてるとは言え、やりすぎだと言う苦情が来ているわ」

「そうですね。ニュースとかでは『事件の解決に貢献した!』とか『またもや未解決事件を解決。正体は如何いかに?』とかやっていてここ最近は『雷音』の話題は尽きませんね………………」

「それもこれも貴方が好き勝手に暴れているからでしょ?」

「『雷音』は俺のもう一つのやりかたなので。任せたのであれば文句は言わないでください」

そう。今、世間を騒がしている『雷音』は俺のもう一つの顔だ。
小さい頃、国家機関に機械の知識を頭に入れられて、忍者とは別に国が抱えるハッカーになった。

「まぁ、全国民に丸投げしただけですけど………」

世間っていうのは分かりやすいことが好きだ。
最近ではネットがあるので、ネット環境があれば安全にどこでも騒動に参加出来る。
相手が大罪人であればそれを叩くのが大義名分はあると言う考えがあるからだと思う。
世の中にはなにもかもを抱えてその思いを吐き出したい人がたくさん居るのだから。

「建前は良いとして本題は何ですか?
こんな話をする為にここに呼んだわけじゃないでしょ?」

「それはずばり魔獣の調査よ」

「……………何百年前に五流派が倒したとされる魔獣ですか?」

「驚かないのね…………………今のところ閃光学園都市にしか姿を現して居ないし、あまり情報が出回ってないのに……………」

「知っていたので………………僕の情報門を舐めないでください」

「別に舐めてはないわよ」

「その話は置いておいて…………………なぜ魔獣の討伐じゃないのでしょうか?」

「それは…………現場に黒ずくめの人がいたからよ。
その黒ずくめの人が監視カメラに映った瞬間………その魔獣が黒ずくめの人の言うことを聞いて一般人に襲いかかったらしいわ。
幸いそこは五流派の子孫たちが通っている学園の近くでその子孫たちが魔獣を倒してくれたお陰で怪我人は居なかったらしいけど……………」

「五流派の子孫……………はいいとして魔獣事件には裏がある可能性があると?」

「えっ、五流派の子に興味湧かないの?」

「俺の性格を知っているでしょ」

「そうね。さっきの話に戻るけど……………可能性は2つある。1つ目は魔獣の封印を解かれた説。魔獣の封印は普通、私たち一族ぐらいしか知らないからこの説だった場合だと私たち一族に裏切り者が居ると言うことになるね。2つ目は人工的に作られている説。そんな技術がある存在するということは信じたくないけど…………」

「………………どちらにしても魔獣の調査するには魔獣に接触しないと分かりません」

「…………………魔獣により近づくにはその学園都市にある騎士学園に入学して………騎士団に入ればより早く魔獣のことを知れるかもしませんね。
も、もしかしてあの学園の騎士団に入れと言ってませんよね?」  

「それは貴方の勝手よ。悠真」

良かった。
俺は集団行動が苦手だから例えば集団で連携を取って戦うとか信頼している相手ぐらいしか背中を預けられない。

「でも最近、魔獣の被害が増加してるらしいから被害を最小限に食い止めて欲しいのよ。
国側としては」

「そうですよね。この学園都市の科学は10年進歩していますからね」

「悠真、分かっているとは思うけど…………」

「我々は、決して歴史の表舞台には姿を現れない。
例え、その名が広く伝わってたとしても、
実体を掴まれなければ存在しないも同じだから。
それは我々が例える影のように」

「隠密やスパイ………今じゃ様々な呼び名はあれがやることは変わらない。
その舞台じだいの主という光の後ろで、平和と秩序を護る者。
その名は忍者。
それは、影の中でことを成し、自由に潜む影の刃……………………てすよね?」

「そう。組織という曖昧な名前なのは名を残してはいけないから……………………貴方個人は『雷音』という名を世間に知らしめているけど」

「でもね。本気で守りたい人とか守りたい物が現れたら組織は捨てていいから」

「それは嫌です!ここには俺の意思でいるので………………絶対組織は捨てませんし、やりがいを感じてるので」

「そ、そう」

長官がびっくりしている。
それもそうか。俺がここまで感情的になるのは初めてだから。

「でも表舞台には姿を現さない俺たちに何故国はこの依頼を出したのでしょう?」

「それは簡単な話よ。貴方みたいな実戦経験豊富な人たちが居るからだと思うわ。これからある組織と交わるかもしれないし、国としては国民の危機を見逃せないのかもしれない」

「遠回しに出来れば討伐もして欲しいと言ってるものじゃないですか」

「そうね。……………これは仮説なんだけどある組織が魔獣たちを作っているとしたら呪術を使えるかもしれない」

「そうでしょうね」

呪術は忍者の眷族だけが使える禁断の技で1度使うと寿命が縮まり、下手すれば死んでしまうかもしれないものだ。
古代に危険すぎから歴史から消されたやつだがもしそれが存在するとすれば遺跡などで残されて情報が残されていたとかだろう。

「ただ、その可能性があるだけだから変な概念を頭に入れると視野が狭くなるからね…………特に貴方は考え過ぎるからもっと気楽で良いのよ」

「肝に命じておきます」

「その話が本当だったらどこかしらの忍者か私たち組織に裏切り者が居るって事になるけど」

「忍者の眷族しか妖術と呪術を使えませんからね」

妖術というのは魂の根源を具現化した物だ。
人それぞれ火や水など色々ある。

「この話をしてたら埒が明かないのでこの話はここまでにして…………」

「今回の任務は騎士学園として魔獣の調査をする事」

「理由は二つあるわ。1つ目は騎士学園の人が魔獣と深く関わりがある事。もう1つは………」

「分かってます。母さん」

母さんは俺がこの年で忍びの技術も剣術も母さんや父さん以上に才能があり、ずっとこの組織のために尽くしていることを罪悪感を覚えているのだろう。
だから、少しでも年相応の普通の学生生活を送って欲しいのだろう。

「母さん、ありがとう」

「どういたしまして」

母さんが照れくさそうに言う。

「方法は俺のやり方でいいですか?
何か報告があればしますね」

「了解」

「じゃあ、これで失礼します」

「悠真、菜々瀬ちゃんも騎士学園に行く予定だからよろしくね」

俺の動きが一瞬止まる。

「菜々瀬も参加するですか?」

「菜々瀬ちゃんがいた方が調査しやすいでしょ」

「そうだけど」

「学園生活を楽しんでね」

「それなりには…………」

菜々瀬は俺に信仰的態度を取る時があるから正直、あれは辞めて欲しいが、個人的には信用しているので強くは言えない。

(菜々瀬と学園に行くのは楽しみだな)

俺は知り合いと学園に通える安心感と不安を抱えながらその場を後にした。

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