ドラゴンに転生!〜せっかくなのでドラゴンを謳歌する〜

エン

戦いの激化


 森からとめどなく溢れる魔物の大軍。
 見える限りはゴブリン、ウルフ、オークなどのDまでの魔物で構成されていた。

「後衛組!詠唱開始!」

 ガルムのその一声で後衛にいる魔法の使える者が詠唱を始める。

「一斉投射!!」

 集まった1000を超える後衛組の魔法の一斉投射。
 人間軍の上に無数もの魔法が展開され、魔物に向かって放たれる。

「ギギィ!?」「ワフゥ!?」「ブガァ!?」

 魔物は一定のランク……基本Bを超えないと魔法を使う個体はいない。まぁ、魔法が使えるからBランクって感じらしいけど。
 つまりあの高くてもDランク程度しかいない魔物の群れは後衛組が放った魔法によって約4割ほどが削られた。

「前衛組は攻撃を開始!後衛組は前衛組に当たらない程度の魔法を継続して打ち続けて前衛組のサポートだ!」

 魔法によって仲間がやられていくのを見た魔物たちはわずかな間統率が乱れ、進軍が止まった。
 それに合わせるようにして前衛組が距離を詰め攻撃……殲滅を開始した。
 前衛組は最前線で戦うため、危険性や求められる能力も高い。なのでランクの高い冒険者で構成されている。
 そんな前衛組がDランク程度に押し負けるはずもなく魔物のたちは次々と殲滅されていった。

 ………うまく行きすぎてる。こんなにあっけなく終わるものなのか?

 いや、そんなはずはないだろう。自然におきた魔物の侵攻とは違い“悪魔”の手が加わっている可能性が高いんだ。
 こんなもんで終わるとは思えない。
 
 そんなとき

「「「ウウォォォォォォォォオン!!!」」」

 遠吠えのような鳴き声が戦場に響き渡る。
 見える限りでそれを発していたのは3匹の赤い削られたをしたウルフ……いや、ウルフの上位個体か。
 普通のウルフより2回りほどでかい。

「ハイウルフ……!」

 俺の近くにいた冒険者がそう呟いた。
 
 ハイウルフと呼ばれたウルフの遠吠えを聞いたウルフたちはいままでの動きが嘘のような連携の取れた戦い方をし始め、それに対応しきれなかった前衛組の冒険者たちが倒れていった。

「「「オォォオン!!」」」

 ハイウルフたちがまた鳴いたと思えば周りに3つの3メートルほどの火の玉が現れる。
 それらが冒険者たちに使って放たれ、直撃を受けた者や火の玉によってもたらされた爆風で倒れていった。

「Bランクの“ハイウルフ”だ。あいつらがウルフたちの指揮をとっている。このままだと被害の増える一方だ。手の空いているS以上の冒険者は至急討伐に向かってくれ」

 ガルムのSランク以上の出動要請。

 やっぱあんなもんじゃなかったか。
 S以上の冒険者でもすでに前線に出て戦っているものや後衛として魔法を放っているものもいる。
 しかし俺は様子見のためにとどまっていたが……。

 でるか。

 俺はまだ空は飛べない。だから陸路でハイウルフに近づくしかないのだが、戦っている魔物や守るように展開されたウルフどもが邪魔だ。

 俺の進行方向にいた冒険者と戦っている魔物たちを〈電剣百華〉を放ち殲滅する。
 仕留めきれていないやつもいたがそいつらはほかの冒険者たちがやってくれるだろう。
 
 【身体強化】をかけて接近する。
 守るように展開されたウルフには〈落電撃〉による範囲攻撃で殲滅。一応もう1発打っておいた。
 これで新たハイウルフの間に妨げる魔物はいない。
 〈電檻〉を使いハイウルフを閉じ込めさらに放電。虫の息で動けなくなったハイウルフに爪による斬撃でとどめをさす。

 そうすると周りのウルフたちの動きが最初のような統率とはかけ離れた動きになった。
 まだ他の2匹が現在なため、すべてとはいかないが。

 ……いくら悪魔と呼ばれる存在でも全ての魔物を操るのは無理か。
 おそらくリーダー格の魔物だけ操っているのだろう。

 まてよ……なら…………!

「ゴブリンキング、ウルフキング、オークキングおよびその他のAランクの魔物、そしてそれぞれの配下と思われる魔物の出現を確認しました!」

 【風魔法】によってボリュームが上がり、拡散された報告が響き渡る。

 “キング”系の魔物はそれぞれの魔物の頂点のやつらだ。ランクはSランク。つまり俺と同等のやつらが少なくとも3体。
 それに加えてAランクの魔物、ハイウルフと同じようなキングたちの配下の出現ーー

 ーーこれが“魔物の侵攻スタンピード”……!
 
 これが悪魔の操る魔物たちの進軍。

 それでもなお止まることなく森から増え続ける魔物たち。

 こうして悪魔と人間の戦いの狼煙、世界を轟かす“電撃竜”の出現した戦い。あらたな戦乱の世の始まりとして歴史に綴られることとなる人間”対“魔物”の戦いは激化していった。
 


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品