人間嫌いな俺とビッチな少女

マイナスイオン

嵐の前の



次の日、前日に姉貴に促された俺は大人しく
高校へと向かった。


どうせ俺が1日半居なかったところで何か変わるわけでもない。俺にとっては日常だ。


沙霧がいること以外は......


高校に着いた俺は真っ先にクラスへと向かってそして席に着く。


ほら、俺なんて空気みたいな存在だ。むしろそれの方が楽だ。誰も俺が休んでたことなんて、


「おはよー鍋島くん!」


「おはよ鍋島!」


「早退したと思ったら昨日も休みやがって悪いもんでも食ったのか?」


「拾ったもんでも食ったんじゃねえか?」


「それはお前だよ」


胡桃や神野を含む何人かが俺の席を囲っていた。


「ね?言ったでしょ?ちゃんと鍋島のこと心配してくれる人たちはいるんだからね」


 少しだけ俺の心の氷が溶けるような気がした。


ほんと、人を嫌いって言いながらも自分の単純さが嫌になる。


そんな温かい気持ちとは裏腹にもちろん嫌な言葉を耳には入る。


「東雲さんと鍋島付き合ってたんだってさー」


「えー流石に厳しくない?」


「それに振ったのは鍋島の方らしいよー」


「なにそれー立場わきまえてない感じー?」


 協力して高校祭を作り上げたクラスメイトではないのが俺にとっての救いかもしれないが、少なからず沙霧は中学の時と同じことをしたいらしいな。


「鍋島、気にしちゃダメだよ。みんな好き勝手言ってるだけだから」


「そうだよ!鍋島くんには私や......く、胡桃さんもついてるんだからね!」


「あぁ、ありがとう。俺も少しずつだが前に進もうと思ってる。姉貴にもだいぶん言われたしな」


「へー、有栖さんに言われたんだ~なに言われたのー?」


「胡桃に言うようなことじゃねーよ」


「じゃあ私には教えてよ鍋島くん!」


「お前にも言わねえよ神野」


「私に言うわけないのに里美にいうわけないでしょー」


そんな2人とのやり取りをしていると昨日、姉貴の言ってた意味が少しだけ分かった気がした。あいつに裏切られた過去は戻れねえが、前に進むことはできるもんな。


 少なくとも今、沙霧が俺に何か仕掛けたとしても今の俺ならきっと......


キーンコーンカーンコーン


「席につけー!出席とるぞー!」


誰かの視線を受けている気がしたが、教師の言葉とともにその視線も消えた。


さっきまで視線があったところには沙霧がいたが、いや気のせいだろう。


……


「鍋島お昼食べよー!」


「鍋島くん私もいいかな?」


「里美はいいしー」


「胡桃さんだけだと色々危ないからね!」


「危なくないし!失礼なことをー!」


「ねー!危ないよね鍋島くん」


「あぁ、確かに胡桃はビッチだからな。何されるか......」


「人をビッチ扱いするなー!」


 マジのビッチならこんなことは言えねえよ。


そんなことを言いそうになったが、わざわざいう必要もないだろう。


その後も久しぶりに平穏な、そんな昼休みが過ぎていった。


あの時、中学の時とは違うのかもしれない。


少なくとも信じてと言った胡桃、過去に似たような経験をした神野がいる。


胡桃には嘘告白をされたとは言え、その後のあいつの行動は人を騙すような奴じゃなかったことは明らかだ。俺もあいつを信じたい。


神野にしても胡桃ほどの関わりはないが、高校祭を始め、その後も常に俺のことを気遣ってくれている。


姉貴にも言われた通り、そろそろ俺も現実と向き合わないといけないのかもしれない。


俺は......もう、沙霧からは逃げない。


「なあ、2人に聞いてほしいことがある。俺は沙霧と会って自分にけじめをつける」



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