人間嫌いな俺とビッチな少女
2年ぶりの......
「あー眠い....」
何度も言ってるような気がするが俺は、というか世間は月曜日が憂鬱だ。
それに季節ももう冬だ。肌寒さがより一層憂鬱にさせる。
そんな憂鬱な中、クラスでははある話題で持ちきりだった。
「なあなあ、うちのクラスに入ってくる転入生、めっちゃ美人らしいぜ!」
「聞く話によるとモデルと高校生の二刀流らしいぜ!」
「うちのクラスにもついにメジャーリーガーがくるってやつか!」
……
馬鹿みたいに男子ははしゃぐ。一方の女子は女子で軽い騒ぎとなっている。
「ねえ、美人が来るんだから絶対うちのグループに入れないとね」
「なんならその転入生?をリーダーにみんなが集まればいいんじゃない?」
「あーそれもワンチャンありじゃないー?」
……
どいつもこいつも転入生の意思関係なしに言いたい放題だな。お前も内心気になるんじゃないかと言う声が聞こえてきそうだが、俺は全く興味がない。
「朝からみんなが騒がしいねぇ、鍋島くん」
帝都高校祭以来、暇があれば神野とも話すようになっていた。
「まあ、モデルで美人となれば周りは黙ってないわな」
「楽しみだね!鍋島くん!」
屈託のない笑みに俺は頷きで答えた。
あんな笑顔で言われて、俺は全く興味がないと言い放つ勇気は今の俺は持ち合わせてないようだ。
「へー鍋島、転入生が来るの楽しみなんだー」
神野とも変わるように現れたのは絶賛膨れ顔中の胡桃だ。
「いや、内心全く興味ねえよ。だけど、あんな笑顔で言われたら何とも言えねえだろ」
「私が笑顔でも何も言わないくせに~!ま、そんな美人が来てフラフラいくようなら私にもう惚れてるもんね」
「いや、それはそれでないと思う」
「なんで鍋島にそんな言われ方しないといけないのよー!」
「だってお前ビッチだし」
「ビッチって言うなぁ!もう知らないー!
昼休憩図書室で待ってるからねーだ!ふん!」
「はいはい」
彼女の言葉を適当に流す。ほんと、喜怒哀楽激しいやつだ胡桃は。
「おーい、みんな席につけー!今日はみんなにお知らせがあるんだ」
どうやら転入生のお出ましってわけか。
「先生、このクラスに美女が入って来ることはリサーチ済みですよー」
「先生はいいから早くその子出してよー!」
「みんな僕の扱い雑すぎじゃないですか....」
あからさまに落ち込む先生だが、そんなに馴染みたいならもっと高校祭に積極的に参加した方が良かったと思う。ま、俺が言うのもなんだけどな。
「みんなの知ってる通り、この学校に転入生が来ることになった。そして選ばれたのがうちのクラスというわけで、よし入ってきて」
 ガラッ!
ドアが開き、転入生の姿を見た瞬間、さっきまでの俺の余裕は跡形も残らずなくなった。
2年ぶりだとはいえ、その姿を一瞬見ただけで俺はすぐに分かった...... 
「沙霧....」
 その転入生は俺の幼馴染であり、俺を裏切り、俺の人に対するトラウマの元凶でもある
東雲沙霧だった......
*********************
ほんと、朝からクラスが騒がしい。
そんなにモデルで可愛い子が来るって騒ぐことなのかなぁ?
だけど、きっと彼と出会うまでの私ならグループで絶対にあの子は欲しいとか、色んなことを話してだと思う。可愛いは正義だしね。
それにさっき鍋島と話して、彼の全くの興味のない反応に私は安堵した。
興味ないだろうなって思ってたけど本当、期待を裏切らない反応をしてくれるよ。
 私が好きを自覚してからというもの今まで以上に彼と話したいと思うようになったし、足の捻挫も重なってだいぶん、甘えさせてもらった。
彼もそれに文句を言いながらもずっと私の足が治るまではずっと付き添ってくれていた。
 流石におんぶはしてくれなかったけどね!
 だけど彼は私を好きになってくれるような素振りは全く見せない。別にだからといって、諦めたいとか落ち込んでるわけでもないけど、まだ何か彼には秘密があるんじゃないかと思う。
「……よし、入ってきて」
先生の言葉と共にドアが開き、噂通りの美少女が教壇へと向かう。
この子、もしかして帝都高校祭に来てたあの幼馴染がどうとか言ってた子....?
幼馴染という言葉に引っかかり、私は衝動的に鍋島を見る。
けれども、他の男子と違い、彼はその可愛さに反応するわけでもなく、彼の表情から光というものが消えていた....
「東雲沙霧です。色々と噂で回っちゃったみたいだけどモデルもしてます。どうぞよろしくお願いします!」
クラスからは拍手喝采、早く名前を覚えてもらおうとクラスから自己紹介が飛び交う。
ただ1人を除いては......
「あ、あと!こんな場で申し訳ないんですけど、久しぶり、睦月!ずっとあなたに会いたかった」
「え?鍋島?鍋島とどういう関係なんだよー!」
「胡桃に続いて、いきなり東雲さんまで?」
「どうしてあいつばっかりなんだー!」
……
「胡桃?ま、いっか。彼とは生まれた時からの幼馴染だったの。こっちの県外に睦月が出たからしばらく疎遠だったんだけどね」
「なーんだ、幼馴染かぁ」
「ま、鍋島くんも意外にいい顔してるけどモデルとは流石に関わりないもんね~」
「なら席は鍋島の隣がいいよな?」
先生の提案に彼女はとびっきりの笑顔で答え、先生までもがタジタジになっている。
「睦月、久しぶり。まさかもう私と会わないで入れると思った?」
何か鍋島の耳元で何かを言った気がするが流石にそこまでは聞き取れなかった。
 だけど....彼の、鍋島の反応を見れば一目瞭然だった。
有栖さんが言ってた彼を裏切った幼馴染というのは間違いなく彼女だということを。
そして、この日の昼休みに約束の図書室に鍋島が来ることはなかった。
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