人間嫌いな俺とビッチな少女

マイナスイオン

口実デート 後

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お昼を終えて麺工房を出た私と鍋島。


前髪を上げた鍋島はやっぱり少しかっこいいとふと思う。
 長い前髪に隠れて普段は見えないけど、とても綺麗な顔立ちをしている。
目は少し濁ってしまっているのが残念だけど....


私はこのまま何も言わないと鍋島が目的地である
西急レッグスへ向かってしまう気がした。


「ねえ鍋島!次は映画を見に行かない?」


だから私は先手を打つことにした。


「西急レッグスに行くんじゃなかったのかよ」


そして案の定そのつもりだった彼。
可愛い子といるのにこの態度は流石だよね。


「今から行っても時間が余るでしょ?時間があまるのも勿体無いから行かない?それに見たい映画のチケットちょうど持ってるの」


 「時間があるならチケット余らすのも悪いし行ってもいいけど?でもそれ友達と行くためのやつじゃねえのか?」


「友達と予定合わなくなったからいいの!行き先が
決まったなら早く行くよ!」


「はいはい」


私は少しだけ嘘をついた。これは私が鍋島と映画を見たくて買ったチケットなの。もちろん理由は彼を私に惚れさせるためよ。
……
「タイトルは....
【誘拐犯が奪っていったのは私の心でした】
か。なんかツッコミどころが多そうな映画だな」


「最近感動するって話題になってるんだから!
文句は映画が終わった後にしてよね!」


「ま、ちょっと内容が気になるかもしれないな」


「そうね。しっ!ほら映画泥棒出てきたしそろそろ
始まるよ!」


…………


「なんだあの映画....めちゃめちゃ面白かったじゃねえか!」


何故だか鍋島のテンションが高い。


「誘拐犯っていうから警察出てくるのかと思ったら警察出てこないじゃんってツッコんじゃった!」


「セールスポスターにはしっかり警察書いてあるのにな」


「ねえ、初めは誘拐するつもりでいた男と誘拐され
そうだった女の子、2人はこのまま幸せになれるの
かな~?」


「さあな、でもお互いの思いが通じあってる間は
少なからず仲良く居られるんじゃねえか?」


少し儚げな表情でそう言う鍋島。


「なんか嫌なこと思い出させちゃったかな?」


「いや、最後に結ばれることがない恋愛もこの世にはあるんだろうなって思っただけだ」


「人を好きにならないって言ってるのに恋愛語っちゃうのは流石に笑っちゃうよ?」
 

「お前がそこはビッチなだけだろ。別に好きな人が
できなくても映画の批評くらいはさせろよな」


私は鍋島を本当に惚れさせることができるのか少し
不安になる。一緒にいる時間が増え心を少しずつ開いてくれるようにはなったと思うんだけど....


「そ、そろそろいい時間だし目的の西急レッグスに
行こっか!」


 くよくよと悩むのは私らしくない。
気を取り直して私はそう言ったんだけど一瞬の表情の変化を彼は見逃さなかったみたい。


「なんか俺まずいこと言ったか?なんか表情暗くなったような気がした。ま、何でもないならいいけど」


普段人に興味示さないくせに表情の変化をサッと 気づくのは本当にズルいと思う。


鍋島のこと考えてたんだよ!なんてことは言えない
から、


「デリカシーのない男は好かれないよーだ」


こう返すことにした。
 

「ほんと、よくわかんねえ奴だ。まあ何でもないならいい、雲行き怪しいしさっさと行くぞ」


「うん!」


…………


その後も私たちはたわいのない話をしながら
西急レッグスでお化け屋敷で使う材料を買って
いった。
 

「鍋島絶対お化け役しなよ」


「ノーメイクで出れるかもな」


「それはウケる、1人だけ生き霊いるよみたいな?」


「人を霊扱いするな。俺はお前がメイクでブサイクになる様がみたいけどな」


「ふーんだ、可愛い子は何しても可愛いってこと知らないんだ~絶対可愛いお化けになって見せるからね!」


「ブサイクだったら思いっきり笑ってやるから楽しみにしとけよ」
……
出会った最初の方は終始無言だったのに
こうしてずっと話してるだけでも前進かな?
 そんなことを思いながら私はクラスの買い出しを
終えた。


外に出ると雨雲が空一面を覆っていた。


「雨が降りそう....」


「駅まで急ごう!」


走り出してから数分後、
溜めていた鬱憤を晴らすかのように土砂降りの雨が
降り出した。


「うわっ、雨かよ」


「ねえ鍋島傘持ってる?」


「持ってない、てかさっき傘買えばよかったな....」


「ほんと、何で買ってないのよ」


「俺のせいか、まあ今はいい。とりあえず雨宿り
できるところまで走ろう」


「もう、走れる靴じゃないのに~」


 私たちは土砂降りの雨の中一軒のコンビニを見つけた。


「とりあえずあそこ行くか!」


「う、うん!」


私たちはコンビニで雨宿りをすることにした。


「胡桃、傘買ってきた....」


「はっくちょんっ」


ずぶ濡れになったせいか少し寒い....


「少し冷えたか?」


「ちょっと寒いかも....」


「胡桃は家に帰るまで少し距離があるよな」


「うん、二駅分くらいかな?」


 帰るのは難しくないけど、服はずぶ濡れ、
このままだと風邪を引いちゃうかも....


鍋島は少し考えたあと、私にこう言う。


「胡桃、もう少し歩けるか?」


「雨も小雨になってきたし歩けると思うけど」


「そうか....なら、俺の家にくるか?」



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