人間嫌いな俺とビッチな少女

マイナスイオン

手作り弁当は何の味?





“よかった。彼女じゃなくて....”


心の中で出た安堵の言葉はつい口からも発してしまっていたらしい。


“はは、ブレないなお前は。ま、俺に彼女なんてのはいないし、できるわけもつくることもないから心配するな”


私が鍋島のこと少しでも気になってるって思われるのは癪だったけどその心配はなさそう。


それにしても鍋島....笑うんだ。


 だけれども!

それにしても腑に落ちない!だって、まだまだアプローチが足りないのは承知の上だけどここまで興味を示さないこともないんじゃない?
 学年一を自負する私がアプローチしてあげてるんだから早く惚れなさいよ!
 

今までは少し気になった男子がいても仕掛けることなく、向こうから告白してきたからあまりその手に苦労したことはなかったのに。


  嘘告白をする前よりかは当たり前のように
鍋島と話せるようになったし、彼も話しかければそれに応じてくれる。でも彼は基本問いに
応じるだけで自ら言葉を発信しないし....
でも、私との話で笑ってくれたし少しは進歩
してるのかな?お昼も誘えたし!


 お昼はどんな話をしようかなーって考えながら授業を受ける。早く昼休みにならないかなぁ。


……
キーンコーンカーンコーン


4限目の授業の終わり、そして昼休み開始のチャイムが校内に響く。


 お弁当は火曜日に作る予定だったけど、彼女がいるんじゃないかと焦って鍋島の弁当も作ってきてしまった。そして鍋島の分もあることは
伝えていない....


朝会ったときに伝えればよかったなぁ。
鍋島きっとお昼ご飯持ってるよね....


「あれ萌一緒に食べないのー?」


「うん、ちょっと今日は先客がいるから」


「そかそか~ファイティン~!」


「いってらっしゃい~」


私はグループに断りを入れて足早に屋上へと
向かう。


 屋上に着くともう既に鍋島が待っていた。


何だかんだ言って来るあたり律儀な人よね。


「ごめん、待った?」


私はデートの待ち合わせに遅れた彼女を演じるように上目遣いで言ってみる。


「そこら辺のリア充なら今来たところだよ!
って言うだろうが俺は違うからな。お前人呼び出しといて遅すぎだろ」


まさかの苦言、、私の演技プラス上目遣いにはノーコメント....


「なんか用があって呼んだんだろ?今日弁当家に忘れちまって早く購買に行きたいんだ」


「なんでこんな可愛い子がお昼に呼び出したのにすぐ去ろうとするのよ!」


「自分のこと可愛いと言うあたりお前はあれだ、ビッチだ。それに可愛いから問題が
あるんだよ。面倒なことには巻き込まれたく
ないしな」


 「誰がビッチよ!あ、それに今!私が可愛い
こと認めたでしょ?ふーん、へえ。私のこと
可愛いって思ってるんだ~」


「お前本当面倒なやつだな。で本当に何の用だ?マジで俺お腹減ってるんだよ」


「お腹空いてるって言ったわね!ふっ、そっちの方が好都合よ!私があなたの分の弁当も作ってきたから一緒に食べようって言ってるのよ!」


「は?」
「え?」


....一瞬時が止まる。


「お前が俺の弁当作ってきてくれたのか?」


「だから何度もそう言ってるでしょ」


「いや一度しか聞いてない」


「もーあなた本当にめんどくさい男ね!
いいから一緒に食べるわよ」


私は強引に鍋島を座らせ、私特製のお弁当を 鍋島に渡す。


「さあ、開けて食べるのよ!」


何でそんなに乗り気なんだとかブツブツ言い
ながらもオープン ザ 弁当。


そして、私が昨日からタレに漬け込んだ唐揚げを一口、さあ!感想を述べて。


「うん、美味い。胡桃、お前料理できたんだな」


あれ、それだけ?なんかもっとお弁当を作ったら外はカリッと!とか中はジューシーで!とか色々言ってもらえるんじゃないの?


「この卵焼きも美味い。サンキュー胡桃。
学食や購買パンよりお前の料理の方がよっぽど美味いな」


食レポのような感想はもらえなかったけど、自分が作ってものを食べてもらうのも案外いいものかもしれないわね。また気分がのったら作ってみようかな、、、


そんなことを考えてる間に鍋島はどんどん食べてくれている。よし私も食べよう。


その後は会話もなく2人で黙々と食べ続ける
異様な空間が続いたが、私はお弁当を美味しいと言ってもらえたことで胸がいっぱいで気にも留めていなかった。


…………
キーンコーンカーンコーン


予鈴が屋上全体に響き上がる。


「弁当ご馳走さま、本当に美味しかったよ。
これ洗って明日持ってくるから」


それだけ告げて屋上を後にする鍋島。


なんでお礼も言えるし、少し無愛想だけど素直だし普通に会話にもなる。


鍋島はなんで人と関わりを持たないのかな?


それがすごく私の中で引っかかりを覚えたのであった。

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