高校時代のアイドル的存在がニートになって面影がなくなってしまった件

マイナスイオン

かくれんぼ





「もーいいかーい?」


「まーだだよー!」


「もういいかーい?」


「もういいよー!」




 ついに頭でもおかしくなったかみたいな反応はやめてほしい。決して仕事のしすぎで壊れたわけでもない。仕事だって露天風呂付きの家が欲しいって言うから本気で頑張っている。


だけども今日は癒しの休日だ。
 凛乃花も俺に気を使ってくれて家で遊べることをしようと言ってくれた。
 

この気遣いも本気で露天風呂付きの家を建てたい一心での節約でないことを俺は切に祈っている。


「こうちゃーん早く探してよ~」


凛乃花、声出したら俺わかっちゃうぞ?


そう、俺たちは今自宅でかくれんぼをしている。


 「わかった、探しに行くぞ〜」


凛乃花が隠れそうなところ、ここから声が聞こえる範囲では、、


ぴょこっ!


そんな効果音がつきそうなくらい凛乃花がトイレのドアから顔をのぞかせた....気がする。


ガチャッ


ジャー


「「えっ?」」


凛乃花は便器に座っていた....


「なんでこうちゃん今入ってくるのよ〜」


「なんでかくれんぼの最中に用を足してるんだよー!」


この状況、果たして俺が悪いのか?凛乃花の
トイレ中にドアを開けてしまった俺。一般的に考えれば俺ってただの変態じゃん....


いや、でも今はかくれんぼの最中、探しに行くのは至極当然、催促もされたし!


「トイレ姿見られるなんて....私もうお嫁にいけないよ....」


「いや凛乃花、そんなに落ち込まなくても」


「おまけにびっくりしすぎて便器に挟まって抜けないし....」


「お嫁にいけないって、凛乃花は俺がお嫁にもらうって決めてるんだから大丈夫だ!」


「ほんと?」


「ああ、俺は凛乃花と結婚したい」


「やった!これってプロポーズだよね!私、
ずーっと待ってたんだよ!」


はい?プロポーズ?


「旅行行った時にしてくれるかな〜とか期待してたんだけど全然してくれないし、なんかほのめかすようなことばっかり言うから毎回期待させられるんだよ〜」


顔をぷくーっと膨らませて怒ってますポーズを取る凛乃花。


 確かに中々言い出せなかった俺が悪い。
同棲を始めて凛乃花もすぐさまニートになって、安定したらと思いながらもずっと無意識に俺は怖がっていたのかもしれない。


そっか、凛乃花ずっと待ってくれてたんだな....


「結婚しよう」


その言葉が喉から今出ようとしたが、この状況を改めて見てみよう。


下半身丸出しで便器に挟まってる彼女。
それを真正面から堂々と見てる彼氏。  


よし、やめよう。3年間付き合ってきて、、やっと心に決めたプロポーズがこんな感じは絶対いやだ。


それに、将来子どもにどうやってプロポーズ
したのー?って聞かれて、


「お母さんのトイレ中にしたんだよ♪」


なんてことは口が裂けても言えない。いや、
言いたくない。子どもに誇れるプロポーズが俺はしたい!


「凛乃花、俺は凛乃花が大好きだ。結婚したいとも思ってる。だけど!プロポーズはまた
ちゃんとした機会にさせてくれ」


「私もこうちゃんが大好きだよ!早く結婚したいけど、よーく考えたらトイレはマズイよね....
私ちゃーんと待ってるから!こうちゃんのタイミングに任せるよ♡」


「ありがとう凛乃花。いつか、露天風呂付きの家、一緒に建てよう!」


「うん!」




「お兄さん!一体何してるの?」


えっ?理沙?なんで家にいるんだ?
まずい、、この状況....


「いや理沙、違うこれは誤解だ!」


「何が違うんですか?お兄さん、凛乃花さんのトイレ姿をそんな真正面から見て....そんなの
ありえない!お兄さんの変態ー!」




本日も何だかんだありながら凛乃花と充実した休日を過ごせ、また2人の信頼関係を再確認することができて良かった。


ただ、その代償に今、理沙の兄として大切なものを何か1つ失ったような気がする....
 ほんと誤解なんだけどな....


  そしてあの後、理沙への弁解に時間をほとんど使い、そして理沙からかくれんぼ禁止の令を受ける俺たちであった。

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